最新記事

心理学

特定の「誰か」を猛烈に攻撃する善良な市民たち...集団心理の脅威を名著に学ぶ

2021年10月29日(金)11時32分
flier編集部
群集

bee32-iStock

<ギュスターヴ・ル・ボン『群集心理』など歴史に残る3冊の名著が教える、他人に流される心理と、大衆の中で自分という「個」を保つために必要なもの>

「自分は流行りものなんかになびかない」と思っていても、つい売れている商品を手に取ってしまう。「自分の意見をしっかりもちなさい」と言われても、強い言葉を頼りがち。物や情報の溢れている現代のほうがその悩みは深いように思われていますが、100年以上前の人たちも、「流される普通の人びと」の行動について悩んでいました。

「出る杭は打たれる」日本では、「郷に入っては郷に従」いつつ、波風立てないように"うまくやる"のが処世術と思われているところがありました。

そうすることが結果的に、和を乱さず、効率的な集団運営をしていく力になってきたとも言えます。

ただ、それだけで「自分自身の人生」が本当に豊かになっていくかは疑問です。

「流される」一方ではない生き方をつかむには、まず「なぜ流されるのか」への理解を深めることが先決かもしれません。

「知」の名著から社会や人生のヒントを探り、近寄りがたい古典的ベストセラーを、いまのあなたに活かしてみませんか?(この記事は、本の要約サービス「flier(フライヤー)」からの転載です)。

知らぬ間に「流されて」います

211028fl_gssr02.jpg

『群衆心理』
 著者:ギュスターヴ・ル・ボン
 翻訳:櫻井成夫
 出版社:講談社
 flierで要約を読む

ちょっと自分の行動を思い返してみましょう。
・オリンピックなどの国際的なスポーツ大会が開催された時、熱狂して観戦している。
・話題になっていて、友だちの多くが観ている映画やドラマは、自分も観るようにしている。
・知らないお店に行くときには、食べログなどのサイトで評価が高いかどうかを調べる。
・SNSでたくさんの人がシェアしている意見は、きっと正しいのだろうと感じる。

これらについて、一度も経験したことがない人はあまりいないのではないでしょうか?

ちょっとしたきっかけで、さまざまなバックグラウンドをもつ多くの人たちが、同じ方向を向いてしまう。ギュスターヴ・ル・ボンの『群衆心理』は、そうした集団精神のあり方を1世紀以上も前に明らかにした本です。スマホもインターネットもない時代に、いまのSNSの雰囲気を先取りしているかのような内容。なんとあのヒトラーも、そのル・ボンの論理を「悪用」して、人心を掌握したと言われています。

影響力のある人物や(ネットを含む)メディアは、「断言」「反復」「感染」という方法を用いる、といいます。たとえ論拠に乏しくても、強い断言をくり返されると、見識のある人々でさえ強く影響を受けてしまうのです。思想の方向性にかかわらず、成功した人間や英雄的な行動をとった人などの威厳は、特に強い「感染力」をもちます。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

中国への融資終了に具体的措置を、米財務長官がアジア

ビジネス

ベッセント長官、日韓との生産的な貿易協議を歓迎 米

ワールド

アングル:バングラ繊維産業、国内リサイクル能力向上

ワールド

ガザ支援搬入認めるようイスラエル首相に要請=トラン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 7
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 8
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 9
    ビザ取消1300人超──アメリカで留学生の「粛清」進む
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中