静岡敗北で自民党に広がる動揺 衆院選次第で岸田首相の求心力に影響も
岸田文雄政権初の国政選挙となった参議院の静岡補選から一夜明けた25日、首相が2度現地入りしながら敗れたことに自民党内では動揺が広がった。写真は報道各社の取材に応じる岸田氏。25日午前、東京で撮影(2021年 時事通信)
岸田文雄政権初の国政選挙となった参議院の静岡補選から一夜明けた25日、首相が2度現地入りしながら敗れたことに自民党内では動揺が広がった。今週末に投開票を迎える衆院選は複数の世論調査で単独過半数の確保が危ぶまれており、結果次第では来夏の参院選へ向けて岸田首相の求心力に影響が出かねないとの声も聞かれる。
静岡補選は共産党が候補者を擁立し、野党候補が2人並立、3候補の争いとなったため、自民党が公認、公明党が推薦した若林洋平・前御殿場市長が優勢とみられていた。しかし、地元で人気の高い川勝平太知事の本格支援により、野党系候補で無所属の山崎真之輔・元静岡県議が追い上げ、最終的に5万票に近い大差で勝った。
自民党幹部の側近は、リニア中央新幹線の建設計画が進むなど静岡県特有の事情が影響したと解説する。「大井川の水資源に影響があるとしてリニアの工事に反対している川勝知事が保守層にも支持されている」と、この側近は話す。同日に行われた参院山口補選は比例代表から転出した自民党の北村経夫氏が勝利した。
それでも、衆院選の投開票を直前に控えた自民党内からは懸念の声が出ている。ある自民党関係者は、静岡県ならではの事情があったとした上で、「マスコミは現執行部の責任を書いてくるだろう。実際、今の執行部で大丈夫ということにはならない」と話す。
法政大学大学院の白鳥浩教授(現代政治)は、「川勝知事の影響もあったが、無党派をどう取り込んだかが選挙の鍵だった」と指摘。ツイッターなどソーシャルメディアを多用した山崎氏の選挙戦略を評価した上で、「自民党側は自己修正するだろう。衆院選投票日までどう反撃してくるか今後の注目点だ」と述べた。
岸田首相は25日午前、記者団に対し、「ぜひ気持ちを引き締めて衆議院選挙に臨んでいきたい」と語った。一方、最大野党である立憲民主党の安住淳国対委員長は「大きな自信になった。衆議院選挙に想像を超えるようなインパクトを与えるかもしれない」と述べた。
「世論のしっぺ返し」
報道各紙の世論調査によると、衆院選序盤の情勢は289ある小選挙区の多くで与野党候補が接戦を繰り広げられている。立憲民主党と共産党の選挙協力が奏功した格好だ。