最新記事

中国

「羊毛は羊の体に生える」と「バラマキ」を戒める中国――日本の「成長と分配」は?

2021年10月25日(月)09時12分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

財務省の矢野事務次官はバラマキ合戦を批判したが(写真は霞が関の財務省) 7maru-iStock.

コロナによる全国一律給付金を中国は「GDPと政府債務との関係」において抑制し、困窮者に対象を絞っている。「成長と分配」に関して、日本のGDP推移と国債との関係はどうなのか、米中および欧州と比較して考察する。

羊毛は羊の体に生える

今年1月30日、中国共産党機関紙「人民日報」傘下の「環球時報」の編集長である胡錫進氏が、彼個人の微博(weibo)に「羊毛は羊の体にしか生えない」ことを例にとって、コロナ対策としての全国一律の給付金は配布すべきでないという寸評を出している(リンク先が開けない場合はこちらにも転載されている)。

その中で彼は以下のように言っている。

●国家が国民全員に一律にお金を配ったら、基本的には誰にも配らなかったのと同じだ。

●アメリカはコロナで全国民に一律現金を配ったが、あれは選挙のためだ。

●全国民に一律に現金を配ることができるほど中国の財政は潤沢ではない。1人あたり1,000元配ったら国家は一度に1.4兆元を支出しなければならず、国家財政が持たない。赤字が増え、国民が自分自身からお金を借りて自分自身にお金を配っているという状態になる。すなわち「羊毛は羊の体にしか生えない」のだ。

●コロナの流行期にお金を分配するのには二つの目的がある。一つは貧困者を助けることで、もう一つは消費を刺激することだ。前者に関しては、中国には非常に強力な社会組織ネットワークがあるので、それを最大限に活用して、限られた資金を貧困者にのみに分配することが瞬時にできる。全国一律に分配金を与えることは、政治の怠慢であるとさえ言える。(個人情報の)ネットワークを完成していないからだ。

●もし路上生活者にもビル・ゲイツにも同じ金額を配ったら平等か?不平等であることは自明だろう。

●消費を刺激するためにも「現金を分配する」ということは役に立たない。使わないで貯金する人もいるからだ。したがって第二の目的の「消費を刺激するため」には、中国では「お買物券」などをコロナで困っている人や貧しい国民に配った(筆者注:家賃補助などもした)。

以上が概ねの内容である。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米トランプ・メディア、同社株空売り巡りSECに調査

ワールド

トランプ米大統領の出生地主義見直し、最高裁が5月に

ビジネス

マツダ、米国でカナダ向け生産を一時停止 関税リスク

ビジネス

中国航空会社がボーイング機受け取り停止か、米国に戻
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判もなく中米の監禁センターに送られ、間違いとわかっても帰還は望めない
  • 3
    米経済への悪影響も大きい「トランプ関税」...なぜ、アメリカ国内では批判が盛り上がらないのか?
  • 4
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 5
    紅茶をこよなく愛するイギリス人の僕がティーバッグ…
  • 6
    トランプ関税 90日後の世界──不透明な中でも見えてき…
  • 7
    ノーベル賞作家のハン・ガン氏が3回読んだ美学者の…
  • 8
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 9
    今のアメリカは「文革期の中国」と同じ...中国人すら…
  • 10
    関税を擁護していたくせに...トランプの太鼓持ち・米…
  • 1
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止するための戦い...膨れ上がった「腐敗」の実態
  • 3
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 6
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 7
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 8
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 9
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 10
    「世界で最も嫌われている国」ランキングを発表...日…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 8
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中