「羊毛は羊の体に生える」と「バラマキ」を戒める中国――日本の「成長と分配」は?
財務省の矢野事務次官はバラマキ合戦を批判したが(写真は霞が関の財務省) 7maru-iStock.
コロナによる全国一律給付金を中国は「GDPと政府債務との関係」において抑制し、困窮者に対象を絞っている。「成長と分配」に関して、日本のGDP推移と国債との関係はどうなのか、米中および欧州と比較して考察する。
羊毛は羊の体に生える
今年1月30日、中国共産党機関紙「人民日報」傘下の「環球時報」の編集長である胡錫進氏が、彼個人の微博(weibo)に「羊毛は羊の体にしか生えない」ことを例にとって、コロナ対策としての全国一律の給付金は配布すべきでないという寸評を出している(リンク先が開けない場合はこちらにも転載されている)。
その中で彼は以下のように言っている。
●国家が国民全員に一律にお金を配ったら、基本的には誰にも配らなかったのと同じだ。
●アメリカはコロナで全国民に一律現金を配ったが、あれは選挙のためだ。
●全国民に一律に現金を配ることができるほど中国の財政は潤沢ではない。1人あたり1,000元配ったら国家は一度に1.4兆元を支出しなければならず、国家財政が持たない。赤字が増え、国民が自分自身からお金を借りて自分自身にお金を配っているという状態になる。すなわち「羊毛は羊の体にしか生えない」のだ。
●コロナの流行期にお金を分配するのには二つの目的がある。一つは貧困者を助けることで、もう一つは消費を刺激することだ。前者に関しては、中国には非常に強力な社会組織ネットワークがあるので、それを最大限に活用して、限られた資金を貧困者にのみに分配することが瞬時にできる。全国一律に分配金を与えることは、政治の怠慢であるとさえ言える。(個人情報の)ネットワークを完成していないからだ。
●もし路上生活者にもビル・ゲイツにも同じ金額を配ったら平等か?不平等であることは自明だろう。
●消費を刺激するためにも「現金を分配する」ということは役に立たない。使わないで貯金する人もいるからだ。したがって第二の目的の「消費を刺激するため」には、中国では「お買物券」などをコロナで困っている人や貧しい国民に配った(筆者注:家賃補助などもした)。
以上が概ねの内容である。