「羊毛は羊の体に生える」と「バラマキ」を戒める中国――日本の「成長と分配」は?
中国では、中国共産党あるいは政府の言いにくいことや、それとなく表現したいことを、往々にして環球時報の編集長やお抱え学者に書かせたりすることが多いので、これは中国政府の基本的な姿勢だと考えていいだろう。
米中日の政府債務とGDPの推移
では、「国の借金」すなわち「政府の債務」とGDP(国内総生産)との関係に関して、環球時報編集長が例に挙げていたアメリカと中国自身および我が日本の推移を比較してみよう。以下に示すのは「米中日の政府債務とGDP推移」である。データはIMF(国際通貨基金)に基づいた。
図1:米中日政府債務とGDP推移
出典:IMFデータに基づき筆者作成
図1で実践はGDPの値で、破線は政府債務である。
青はアメリカ、赤は中国、緑は日本を示す。
図1から明らかなように、中国のGDPは2010年に日本を抜き、日本は2011年と12年にわずかに増加したものの、その後はひたすら低迷し、アベノミクスはまったく日本経済を成長させていないことが見て取れる。
この、わずかではあるがGDPが成長した時期は、実は民主党政権時代だった(正確には2009年9月から2010年5月まで民主党と社会民主党&国民新党との連立、それ以降は民主党・国民新党の連立)。
2012年12月に安倍政権時代(自民党と公明党の連立)になった瞬間からGDPは下がり始めている。
もちろん2011年には東日本大震災と原発事故があったので緊急財政出動をしなければならなかっただろうし、GDPが安倍政権に入ってから下がり始めたのもその時点では理解できる。
しかし安倍政権が始まり、アベノミクスで経済を再生させると意気軒昂だった割に、GDPは8年以上にわたり、ひたすら低迷したままだというのは喜ばしいことではない。
だというのに、日本政府の債務はGDPを大きく上回り、GDPとの差を広げるばかりだ。
民主党政権の肩を持つつもりはさらさらないが、しかし原発事故は地震によるもので、しかも何十年にもわたって「原発は安全だ!」と強烈に叫び続けて「安全神話」を創り上げてきたのは自民党であり自公政権ではないのか。
「あの悪夢の民主党政権!」と叫ぶのは、少なくとも原発事故に関しては、少々無理があるかもしれない。
ところで中国の場合を見てみると、GDPの方が政府債務を上回っている。