最新記事

地球環境

英王室は本気?エリザベス女王が気候変動との戦いに大号令

Queen Elizabeth II Invokes World War Two in Rallying Cry on Climate Change

2021年10月20日(水)18時41分
ジャック・ロイストン
エリザベス女王

地球環境の修復に人類のチームワークを、と訴えるエリザベス英女王 Andrew Matthews/REUTERS

<地球環境問題で何かと話題をふりまくエリザベス女王とウィリアム王子は本気か>

英国女王エリザベス2世は気候変動に関して、「克服できないように見える困難」ではあるものの、これをきっかけとして世界を変える技術的な解決策が生まれる可能性があると述べ、政府に行動を呼びかけた。

95歳にして英国君主の座にある女王は、サステナビリティ(持続可能性)を推進する英国の役割に期待するスピーチの中で、第二次世界大戦中に生まれた技術的な進展に言及した。

エリザベス女王は、英国のイノベーションの歴史は「困難に対抗するチームワーク」という基礎のもとに築き上げられたと語った。ロンドンで現地時間10月19日に開催されたグローバル投資サミット(GIS)に向けた今回の女王のスピーチは、2020年4月に新型コロナウイルスの感染拡大を受けて特別に行われた演説をほうふつとさせるものだった。

女王は今回、こう語った。「往々にして、私たちが世界を変える技術を作り出すのは、克服が不可能にも見える困難に、団結して立ち向かう時であることが多い」

「英国における私たちのイノベーションの歴史は、困難に対抗するチームワークという基礎から生まれていることを、私はしばしば思い知らされている」と女王は続けた。

ナチスの暗号解読を例に

さらに女王は、世界初の近代的なコンピューターが、イングランドで生み出されたいきさつについて触れた。このコンピューターは第二次世界大戦中、政府暗号学校が置かれた邸宅「ブレッチリー・パーク」において、ドイツ軍のエニグマ暗号を解読するための極秘研究に従事していた科学者チームが開発したものだった。

エリザベス女王は、数学者アラン・チューリングをはじめとするこのチームのメンバーに、社会は「現代世界の多くを作り上げてくれたことを感謝すべきだ」と述べた。

「しかしながら、今日の課題は暗号解読ではない。気候変動が引き起こす問題を、世界中が団結して回避することだ。この課題に立ち向かうことは、政府、実業界、市民社会に属する私たち共通の責任だ」

「英国がサステナブルな未来を確実なものにしようと取り組んでいることを、私は誇りに思う。とはいえ、やるべきことはまだ多い」

今回の女王の発言は、英国が議長国を務める国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)の開催が迫る中で発表されたものだ。10月31日からグラスゴーで開催されるCOP26では、世界各国の首脳が集まり、脱炭素化の動きを前進させるための話し合いを行う。

英国王室メンバーは、気候変動に関して発言することが多いが、10月19日に行われた女王のスピーチはその最新の例だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

完全失業率11月は2.5%、有効求人1.25倍 と

ビジネス

米大手法律事務所、24年に中国撤退加速 地政学的緊

ビジネス

中国CATL、香港上場を計画 グローバル展開強化へ

ワールド

米年末商戦小売売上高が昨年上回る、ネット販売好調=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2025
特集:ISSUES 2025
2024年12月31日/2025年1月 7日号(12/24発売)

トランプ2.0/中東&ウクライナ戦争/米経済/中国経済/AI......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊」の基地で発生した大爆発を捉えた映像にSNSでは憶測も
  • 2
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3個分の軍艦島での「荒くれた心身を癒す」スナックに遊郭も
  • 3
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部の燃料施設で「大爆発」 ウクライナが「大規模ドローン攻撃」展開
  • 4
    「とても残念」な日本...クリスマスツリーに「星」を…
  • 5
    なぜ「大腸がん」が若年層で増加しているのか...「健…
  • 6
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
  • 7
    ウクライナの逆襲!国境から1000キロ以上離れたロシ…
  • 8
    わが子の亡骸を17日間離さなかったシャチに新しい赤…
  • 9
    日本企業の国内軽視が招いた1人当たりGDPの凋落
  • 10
    滑走路でロシアの戦闘機「Su-30」が大炎上...走り去…
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 3
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊」の基地で発生した大爆発を捉えた映像にSNSでは憶測も
  • 4
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 5
    ウクライナの逆襲!国境から1000キロ以上離れたロシ…
  • 6
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
  • 7
    おやつをやめずに食生活を改善できる?...和田秀樹医…
  • 8
    9割が生活保護...日雇い労働者の街ではなくなった山…
  • 9
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 10
    【駐日ジョージア大使・特別寄稿】ジョージアでは今、…
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 3
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊」の基地で発生した大爆発を捉えた映像にSNSでは憶測も
  • 4
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼ…
  • 5
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 6
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 9
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 10
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中