イラク総選挙、最大の敗者はイランだった
Iran Is the Biggest Loser
11日の暫定結果発表を受け、サドルはテレビで改革と反腐敗に重点を置いて演説し、自身の政党連合の勝利を「民兵組織に対する勝利」と位置付けた。
アメリカなどの外国勢力に対しても、イラク内政に干渉しない限り、外国の大使館のイラク国内での活動を歓迎すると発言。民兵組織に対する締め付けを強化する可能性も示唆した。「今後、武器は全て政府の管理下に置くものとする」
こうしたイラク政府の権力強化は武力衝突につながりかねない。民兵組織が自分たちの影響力が低下していると見なせば、なおさらだ。
既に一部の民兵組織は、選挙結果を受け入れない姿勢を示唆している。
イラクの今後は、こうした暴力的な脅しに、治安部隊と各政党がどう対処するかに大きく左右されるだろう。民兵組織の攻撃能力を制限しなければ、選挙プロセスだけでなく、治安と統治もダメージを受けかねない。
結局は現首相が続投?
民兵組織の脅しを別にすると、今後のイラク政治の焦点は、連立政権がどのような形になるかによる。大衆の目に見えないところで、さまざまなグループの間で駆け引きが繰り広げられるだろう。
サドルはクルド人勢力と手を組むとともに、議会最大のスンニ派政党で、モハメド・ハルブシ国会議長率いる進歩党と連立を組む見通しだ。それでも過半数の議席は確保できないから、さらなる連立相手を見つける必要がある。
今回の選挙の重要な結果の1つは、国民に直接働き掛け当選を果たした独立系議員のグループが登場したことだろう。これは選挙法の改正によって可能になったものだ。
薬剤師のアラー・アル・リカビ(2019年10月の反政府デモで知られるようになった)が率いる独立系議員のグループ「イムティダド運動」は、10議席を獲得したようだ。
彼らは連立に加わって、旧来型の政治プロセスに染まるリスクを冒すか、それに反対する国民の声として独立を貫き、純粋だが政治的には無力であり続けるかの選択を迫られるだろう。
次期首相を誰にするかをめぐり、サドルが連立相手と合意できなければ、ムスタファ・カディミ現首相が続投することになるかもしれない。カディミは、サドルともハルブシともクルド人とも良好な関係にあるからだ。
連立交渉が数カ月にわたり長期化すれば、このシナリオが現実になる可能性は十分ある。
連立政権は首相のほかにも、大統領と国会議長という2つの重要ポジションを埋める必要がある。イラクでは慣例的に、首相がシーア派ならば、国会議長はスンニ派、大統領がクルド人という権力分担がなされてきた。