最新記事

インデックス投信

株式インデックス投資、何が良いか──先進国株、新興国株、米国株と日本株、どれを選ぶ?

2021年10月11日(月)19時30分
熊紫云(ニッセイ基礎研究所)

株式インデックス・ファンドがなぜ魅力的な投資対象か、過去の4度の株価暴落前後のデータから徹底検証 adventtr-iStock.

<退職後の余裕資金のために資産形成を始める場合、数ある投資手段のなかでもなぜ株式インデックス投資が魅力的なのか。実際のデータをもとに検証する>

*この記事は、ニッセイ基礎研究所レポート(2021年10月08日付)からの転載です。

1――はじめに

資産形成は老後資金のみならず、自助努力が求められる流れになってきた。2019年6月に、金融庁の金融審議会で報告された長寿社会の日本における「老後資金の2,000万問題」が世間で大きな物議を醸した。「夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職の世帯では毎月不足額の平均は約5万円であり、まだ20~30年の人生があるとすれば1」、公的年金の他に、2,000万円の金融資産が必要だと提唱された。こうしたこともあり、老後資金の早めの準備など、将来のために資産形成を始めたいと考える人が多くなっている。

資産形成の手段においては預貯金、債券、株式(個別株)、投資信託、不動産などがある。しかし、数ある資産形成手段の中で、なぜ株式インデックス投資が魅力的なのかを、まず初めに説明してみたい。

現状、預貯金は安全性が高いが、低金利環境で収益性は極めてゼロに近い。個人向け国債も元本割れリスクがなく安全性が高いものの、低金利で収益性が低い。一方で、株式は後ほど説明するが、価格が短期的に大きく変動するリスクはあるが、収益性が高く、分散や長期投資等でリスクを抑制することもできるため、長期の資産形成に向いている。

株式に投資する方法はいくつかある。まず、株式の個別株に投資する場合は、多くの銘柄から自らのニーズに合わせて自由に選択し投資することができる。しかし、企業に関する情報収集などの手間と一定以上の金融知識が求められ、また、1銘柄当たり最低でも投資資金として数万円程度を要するため、リスク軽減のために多くの銘柄へ分散投資するには相当な金額が必要となる。そのため、投資の初心者にはハードルが高い。

一方で、株式投資には、投資信託という、専門の運用会社が投資家から集めたお金を一つ大きな資金としてまとめ、株式などに、国・地域と業種に分散投資できる2手段がある。最低金額も100円から始められるものがあり、少額から手軽に投資できる。

投資信託の中ではさらに、プロの運用者が選択した比較的少数の銘柄を組み入れて各種指数を上回る収益を目指すアクティブ型投資信託と、各種指数と同様の値動きを目指すインデックス型投資信託に分けられる。

主要な市場インデックス型投資信託はニュース等でも報道される有名な株式市場の各種指数の動きと連動しており、値動きが把握しやすい。また、20年、30年後のための資産形成の場合、コストがとても重要になるが、インデックス型投資信託は、一般的にアクティブ型投資信託よりコストが安い。また、インデックス型投資信託は数多くの銘柄を組み込んでいるので、少数の株式に投資するよりもリスクが分散されており、相対的にリスクが小さい。以上のことから、株式インデックス投資は、資産形成の手段として初心者に適していると筆者は考えている。

────────────────
1 金融審議会「市場ワーキング・グループ報告書」(2019年6月3日)16頁より抜粋。

2 投資信託協会ウェブサイト「投資信託を学ぼう」―「そもそも投資信託とは?」を参照した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア、中距離弾でウクライナ攻撃 西側供与の長距離

ビジネス

FRBのQT継続に問題なし、準備預金残高なお「潤沢

ワールド

イスラエル首相らに逮捕状、ICC ガザで戦争犯罪容

ビジネス

貿易分断化、世界経済の生産に「相当な」損失=ECB
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中