台湾緊張、飛来した中国機の数だけでなく編成が物語る本気度
Taiwan Official Calls China Situation “Most Severe”in Decades
「この地域では、中国の行動に対抗できる何らかのメカニズムを構築する必要があると見て、民主主義陣営の国々が徐々に手を組み、ある種の連合を形成しつつある」と、米シンクタンク・グローバル台湾研究所の台湾駐在上級研究員J・マイケル・コールは指摘する。
アメリカは台湾と外交関係を断ってからも、引き続き政治的・軍事的な支援を行なってきたが、「中国が攻めてきたら守ってやる」と台湾にはっきり約束したわけではない。
それでもインド太平洋地域における米軍の活動は活発化していて、それに対抗して中国軍の行動も増えていると、中国陸軍の元大佐で、北京在住の軍事コメンテーターであるYue Gangは言う。
「バイデン政権になってから、多数の軍艦や軍機を派遣し、同盟国との連携を誇示して、盛んに中国を牽制するようになった。中国としては『われわれの力を見くびれば痛い目にあう』とアメリカに知らせようとしているのだろう」
中国軍機が台湾のADIZに進入すれば、台湾はそのたびにスクランブル(緊急発進)をかけねばならず、装備も人員も消耗し、防衛能力が低下すると、Yueは指摘する。「軍用機は飛び立つたびに、少しずつエンジンの寿命が縮む」
狼少年効果も狙う?
ADIZ進入は台湾をイラつかせるだけでなく、中国軍のパイロットを優位にし、「中台統一の最後の手段として中国が武力行使に踏み切った場合」にも、またいつもの挑発かと思わせて、台湾の意表を突くことができると、グレアムは指摘する。
もっとも、今のところ中国がすぐにも「最後の手段」に出る可能性は低いというのが大方の見方だ。
「(ADIZ進入は)どちらかと言えば心理的な作戦で、『台湾にこれ以上近づくな』と、アメリカに警告するためのシグナルと見ていい」と、マストロは言う。