岸田新総裁選出、韓国メディアは一斉に日韓関係の改善を要望
河野氏の新首相就任を期待する声が広がった
自民党総裁選が、事実上、岸田文雄前政務調査会長と河野太郎前行政改革相の一騎討ちになると、韓国では河野氏の新首相就任を期待する声が広がった。
河野太郎氏は外相だった2019年7月19日、いわゆる徴用工訴訟をめぐって、日韓請求権協定に基づく仲裁委員会の設置に韓国政府が応じなかったことを受け、当時の南官杓(ナム・グァンピョ)駐日韓国大使を呼んで抗議を行った。南大使が日韓双方の歩み寄りを提案すると河野外相は「極めて無礼」と一喝した。2018年12月の韓国海軍によるレーダー照射事件にも厳しい姿勢で臨むなど、韓国に対して強硬な態度を示したが、外相だった河野氏は直接対話を行ってきた。また、いわゆる河野談話を発表した河野洋平元官房長官の子でもある。父親の談話をないがしろにはしないだろうと期待した。
一方、岸田文雄氏は、外相だった2015年12月、日韓慰安婦問題で合意した当事者で、文在寅大統領はその合意を破棄した。任期末が近づいた文大統領は21年1月の新年の辞で「慰安婦合意は有効」と言葉を変えたが、岸田首相の下での関係改善は遠いという見方が有力だ。
韓国は政権が変わると、方針や政策が大きく変わることが珍しくない。とりわけ、政権党が変わると前政権を否定する。たとえば、親日と目された朴槿恵前大統領は、就任当初は同じ保守政党の李明博元大統領の反日基調を踏襲し、政権後半になってから米国の要請も相まって日本に歩み寄った。
一方、左派政党の文在寅大統領は、朴槿恵前大統領を否定した。保守政権の基本である北朝鮮に対する強硬姿勢を転換し、朴政権が掲げた教育改革を廃止した。また、公約に掲げながら一度は引っ込めた朴政権時の日韓慰安婦合意破棄を強行した。
大統領制を採用し、大統領に権限が集中する韓国は、日本も韓国と同様、首相が変わると方針が大きく転換すると考える人が少なくない。菅義偉内閣が発足したとき、日韓関係の改善を期待したが、議院内閣制を採用する日本は首相が変わっても政策が大きく変わることはない。
韓国政府は対話を求め、メディアや財界は関係改善を求めるが、在韓日本人や日韓ビジネス従事者、日韓関係を注視する人の多くが、日韓関係は来年5月に新大統領が就任するまで変化はなく、以降の関係も次期大統領次第だと考えている。