「妥協の産物」岸田文雄が長期政権を築く可能性
Picking the Safe Option
日本の旧植民地で、日本の政府関係者にとって常に身近な存在でありながら、国際舞台では影が薄い台湾についても、自民党内で積極的な発言が増えている。高市は9月20日に台湾の蔡英文(ツァイ・インウェン)総統とオンラインで会談。これからも「緊密に連絡を取り合いたい」と語り掛けた。
さらに踏み込んだ発言をしたのは、奔放な発言で知られる麻生太郎元首相だ。今年7月、麻生は中国が台湾に侵攻した場合、日本の「存立危機事態」に関係してくるとして、日米で台湾の防衛をすることを考えてもおかしくないと述べた(日本政府は麻生の個人的見解だと強調している)。
問題は、岸田新政権が対中政策を変更するのか、それとも選挙戦でのレトリックのままにしておくのかということだ。シンクタンク、アメリカ進歩センターのアジア担当シニアフェローのトバイアス・ハリスは、ツイッターに次のように投稿している。
「岸田が中国に対してより強硬な路線を明らかにしていることは、たとえ右派の支持を固めるためであっても、自民党の中道が対中強硬路線にシフトしていることを示す確かな兆候だ」
参院選を生き残れるか
河野にとって、今回の敗北は大きな痛手だろう。総裁選の投票直前に日本経済新聞とテレビ東京が行った世論調査では、岸田の支持率17 %に対し、河野は46%と大差のトップだった。決選投票でも47の都道府県票のうち39票を獲得している。
大きな敗因は、同僚議員の支持が集まらなかったことだ。祖父と父親が有力な政治家という血筋を誇り、安倍政権で外相と防衛相を務めた河野だが、唐突な言動でも知られている。
2020年6月には、北朝鮮の脅威に備えて日本政府がアメリカと連携して進めていた地上配備型迎撃ミサイルシステム、イージス・アショアの配備プロセスを停止すると突然、発表。担当者は事後の調整に追われた。
また、河野は社会的にリベラルとみられており、同性婚やLGBTQ(同性愛など性的少数者)の権利に賛同を表明している。同性婚は日本人の間で支持が広まりつつあるが、自民党ではあまり好まれない。
一方で、自身の権力基盤を持たずスター性もない岸田は、もう1つ重要な課題を抱えている。いかにして日本の「回転ドア」の首相に名を連ねないか、ということだ。
安倍の在任記録を別にして、2006年以降の日本の首相の平均在任期間はわずか381日。国際的な論争で目立つことを嫌う日本は、安倍長期政権の前は、国際舞台で存在感を失う一方だった。
日本の有権者は、安倍の劇場型政治を見せられるまでは、精彩を欠くリーダーシップに当然ながら不満を募らせていた。新政権発足直後のハネムーン期間も短い。無愛想な菅でさえ、就任時の支持率は74%だったが、総裁選への再出馬を見送った今年9月には30%程度まで落ち込んだ。