最新記事

エネルギー

コロナ後の世界を襲うエネルギー不足──価格急騰が家計を直撃

U.S. Heating Bills Could Rise as Much as 30 Percent Amid Increased Demand for Natural Gas

2021年10月1日(金)17時01分
ローレン・ギエラ
ガソリンが切れたイギリスのガソリンスタンド

「燃料切れ」のサインを出すイギリス・ハートフォードシャーのガソリンスタンド(9月29日)Matthew Childs-REUTERS

<LNGを世界に輸出するアメリカでさえ、今冬の各家庭の暖房費は30%増になる見込み>

天然ガスの価格が昨年の2倍以上に高騰しており、アメリカではこの冬の各世帯の暖房費が30%程度高騰する可能性が高い。

価格高騰の原因は、コロナ禍からの経済回復に伴って、多くの家庭や企業でコロナ前より燃料消費が増えていることだ。需要底上げが、世界中で暖房費の高騰を招く可能性が高いとみられている。

全米エネルギー支援協会(NEADA)のマーク・ウルフ事務局長は、AP通信に対して、「昨年(2020年)はパンデミックの影響であらゆるものが閉鎖されたため、天然ガスの価格がとても安く、消費者はその低価格に慣れてしまった」と語った。「だが今では全ての経済活動が再開されつつあり、再び大量の天然ガスが使用されるようになり、価格が押し上げられている」

NEADAでは、この冬はアメリカで天然ガスの価格が昨年に比べて30%程度高くなる可能性があると予測。各世帯の暖房費の平均は、前年同期の572ドルから750ドルに高騰する可能性があるとみている。

以下にAP通信の報道を引用する。

液化天然ガスの争奪戦

ヨーロッパとアジアでは、天然ガスの価格高騰が原因で、一部の企業が廃業に追いやられている。イギリスではこの数週間で、小規模エネルギー企業4社が破たん。天然ガスを原料とする化学肥料メーカーは経営難に陥っており、大量のエネルギーを消費するアルミニウムやセメントのメーカーなど、重工業産業も大きな打撃を受けている。

ヨーロッパとアジアの電力各社は液化天然ガス(LNG)の争奪戦を繰り広げており、これが価格を吊り上げている。天然ガスを液化させてヨーロッパとアジアに輸出しているアメリカでも、価格が高騰。これが世界中の消費者のガス料金高騰につながっている。アナリストたちは、消費者が最も燃料を消費する冬にかけて、今後さらに価格が高騰するだろうと予想している。

その上、ヨーロッパは昨冬大寒波に見舞われ、暖房用のガス需要が急増。これに対応するために貯蔵タンクから大量の天然ガスが引き出された結果、備蓄が少なくなっている。さらに今夏は例年よりも風が弱かったため、風力タービンによる発電量が比較的少なく、例年以上に天然ガスに頼らなければならない状況だ。その結果、備蓄分はさらに減少した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

英軍個人情報に不正アクセス、スナク氏「悪意ある人物

ワールド

プーチン大統領、通算5期目始動 西側との核協議に前

ワールド

ロシア裁判所、JPモルガンとコメルツ銀の資産差し押

ビジネス

UBS、クレディS買収以来初の四半期黒字 自社株買
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    「真の脅威」は中国の大きすぎる「その野心」

  • 3

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 4

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表.…

  • 5

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 6

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 7

    「ハイヒールが効率的な歩行に役立つ」という最新研究

  • 8

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 9

    メーガン妃を熱心に売り込むヘンリー王子の「マネー…

  • 10

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 5

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 6

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 7

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 8

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 9

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 10

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中