コロナ後の世界を襲うエネルギー不足──価格急騰が家計を直撃
U.S. Heating Bills Could Rise as Much as 30 Percent Amid Increased Demand for Natural Gas
「燃料切れ」のサインを出すイギリス・ハートフォードシャーのガソリンスタンド(9月29日)Matthew Childs-REUTERS
<LNGを世界に輸出するアメリカでさえ、今冬の各家庭の暖房費は30%増になる見込み>
天然ガスの価格が昨年の2倍以上に高騰しており、アメリカではこの冬の各世帯の暖房費が30%程度高騰する可能性が高い。
価格高騰の原因は、コロナ禍からの経済回復に伴って、多くの家庭や企業でコロナ前より燃料消費が増えていることだ。需要底上げが、世界中で暖房費の高騰を招く可能性が高いとみられている。
全米エネルギー支援協会(NEADA)のマーク・ウルフ事務局長は、AP通信に対して、「昨年(2020年)はパンデミックの影響であらゆるものが閉鎖されたため、天然ガスの価格がとても安く、消費者はその低価格に慣れてしまった」と語った。「だが今では全ての経済活動が再開されつつあり、再び大量の天然ガスが使用されるようになり、価格が押し上げられている」
NEADAでは、この冬はアメリカで天然ガスの価格が昨年に比べて30%程度高くなる可能性があると予測。各世帯の暖房費の平均は、前年同期の572ドルから750ドルに高騰する可能性があるとみている。
以下にAP通信の報道を引用する。
液化天然ガスの争奪戦
ヨーロッパとアジアでは、天然ガスの価格高騰が原因で、一部の企業が廃業に追いやられている。イギリスではこの数週間で、小規模エネルギー企業4社が破たん。天然ガスを原料とする化学肥料メーカーは経営難に陥っており、大量のエネルギーを消費するアルミニウムやセメントのメーカーなど、重工業産業も大きな打撃を受けている。
ヨーロッパとアジアの電力各社は液化天然ガス(LNG)の争奪戦を繰り広げており、これが価格を吊り上げている。天然ガスを液化させてヨーロッパとアジアに輸出しているアメリカでも、価格が高騰。これが世界中の消費者のガス料金高騰につながっている。アナリストたちは、消費者が最も燃料を消費する冬にかけて、今後さらに価格が高騰するだろうと予想している。
その上、ヨーロッパは昨冬大寒波に見舞われ、暖房用のガス需要が急増。これに対応するために貯蔵タンクから大量の天然ガスが引き出された結果、備蓄が少なくなっている。さらに今夏は例年よりも風が弱かったため、風力タービンによる発電量が比較的少なく、例年以上に天然ガスに頼らなければならない状況だ。その結果、備蓄分はさらに減少した。