最新記事

パンデミック

ワクチン接種率84%のシンガポール、規制緩和で感染者・死者が過去最高を記録

2021年10月25日(月)18時53分

オックスフォード大学が運営する「アワーワールド・イン・データ」によると、100万人当たりの7日間移動平均の死者数はシンガポールが1.77人で、同じアジアの日本(0.14人)、韓国(0.28人)より多い。米国は4.96人、英国は1.92人だ。

一方、シンガポールの100万人当たりの累計死者数は47.5人と世界最少。ブラジルは2825.7人、米国は2202.4人となっている。

デルタ株で一変

シンガポール政府が8月に一部規制を緩和した後、新規感染者数はじわじわと拡大し、今月18日からの週は4000人近くと、昨年のピーク時の3倍に迫る水準になった。

パンデミックの大半の期間を通じて厳格な規制措置が感染を抑えてきたとはいえ、デルタ株に対する効果は弱まっている、と専門家は指摘する。もちろんワクチン接種率が高いおかげで、ほぼ全ての感染者は無症状か軽症にとどまっている。

国立大学病院の感染症専門家、デール・フィッシャー氏は「死者のほとんどはごく限られた数のワクチン未接種者だ。新型コロナウイルス感染症が風土病化するとともに、感染者がどんどん増えているという現実がある」と述べた。

こうした中でシンガポール政府は、医療体制への重圧を和らげる目的で社会距離に関する制限の一部を約1カ月間延長する方針を打ち出した。

また、12歳以上の国民向けのワクチン接種がほぼ完了したことから、政府は追加接種に軸足を置きつつあり、高齢者や医療従事者だけでなく30歳以上の一般国民までを対象にしようとしている。

シンガポールは、ワクチン接種自体を義務化していないが、未接種の場合は飲食店やショッピングモールへの入場が禁止されている。このため、11日からの週に1回目のワクチンを打った未接種者は1万7000人と前週比で54%も増えた。

アジア・パシフィック・ソサイエティ・オブ・クリニカル・マイクロバイオロジー・アンド・インフェクションのポール・タンビア氏は「規制緩和が感染者数に影響を及ぼすとは思わない。依然として重要なのは残っている未接種の高齢者にワクチンを行き届かせ、弱者を守ることだ」と強調した。

(Aradhana Aravindan記者)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・誤って1日に2度ワクチンを打たれた男性が危篤状態に
・新型コロナ感染で「軽症で済む人」「重症化する人」分けるカギは?
・世界の引っ越したい国人気ランキング、日本は2位、1位は...


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米関税で市場に動揺、貿易戦争・景気後退を懸念 「最

ワールド

訂正(3月31日配信の記事)-トランプ大統領、3期

ワールド

トランプ氏が相互関税発表、日本は24% 全ての国に

ビジネス

訂正米自動車関税、年数千億ドル相当が対象 車載コン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台になった遺跡で、映画そっくりの「聖杯」が発掘される
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 7
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 8
    博士課程の奨学金受給者の約4割が留学生、問題は日…
  • 9
    アメリカで「最古の銃」発見...いったい誰が何のため…
  • 10
    トランプ政権でついに「内ゲバ」が始まる...シグナル…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 7
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 8
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 9
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中