ワクチン接種率84%のシンガポール、規制緩和で感染者・死者が過去最高を記録
オックスフォード大学が運営する「アワーワールド・イン・データ」によると、100万人当たりの7日間移動平均の死者数はシンガポールが1.77人で、同じアジアの日本(0.14人)、韓国(0.28人)より多い。米国は4.96人、英国は1.92人だ。
一方、シンガポールの100万人当たりの累計死者数は47.5人と世界最少。ブラジルは2825.7人、米国は2202.4人となっている。
デルタ株で一変
シンガポール政府が8月に一部規制を緩和した後、新規感染者数はじわじわと拡大し、今月18日からの週は4000人近くと、昨年のピーク時の3倍に迫る水準になった。
パンデミックの大半の期間を通じて厳格な規制措置が感染を抑えてきたとはいえ、デルタ株に対する効果は弱まっている、と専門家は指摘する。もちろんワクチン接種率が高いおかげで、ほぼ全ての感染者は無症状か軽症にとどまっている。
国立大学病院の感染症専門家、デール・フィッシャー氏は「死者のほとんどはごく限られた数のワクチン未接種者だ。新型コロナウイルス感染症が風土病化するとともに、感染者がどんどん増えているという現実がある」と述べた。
こうした中でシンガポール政府は、医療体制への重圧を和らげる目的で社会距離に関する制限の一部を約1カ月間延長する方針を打ち出した。
また、12歳以上の国民向けのワクチン接種がほぼ完了したことから、政府は追加接種に軸足を置きつつあり、高齢者や医療従事者だけでなく30歳以上の一般国民までを対象にしようとしている。
シンガポールは、ワクチン接種自体を義務化していないが、未接種の場合は飲食店やショッピングモールへの入場が禁止されている。このため、11日からの週に1回目のワクチンを打った未接種者は1万7000人と前週比で54%も増えた。
アジア・パシフィック・ソサイエティ・オブ・クリニカル・マイクロバイオロジー・アンド・インフェクションのポール・タンビア氏は「規制緩和が感染者数に影響を及ぼすとは思わない。依然として重要なのは残っている未接種の高齢者にワクチンを行き届かせ、弱者を守ることだ」と強調した。
(Aradhana Aravindan記者)
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