中国不動産バブルの危険度を、さらに増幅させる3つの「隠れたリスク」
A CONFIDENCE PROBLEM
対GDP比で見た中国の政府債務は約70%で、アメリカ(約133%)や日本(約256%)、フランス(約115%)と比べればずっと少ないから、政府が潜在的な危機に対処する余力は十分にある。中国人民銀行(中央銀行)も、信用収縮が起きた場合、市場に大量の流動性を供給するツールと能力を持つ。
だが問題は、中国当局がこうした介入措置に前向きかどうかだ。中国恒大は国有企業ではないし、政府は格差解消運動「共同富裕(みんなで豊かになろう)」を本格化している。そんななかで中国恒大を救済して、その創業者で支配株主であり大富豪である許家印も救うのでは市民に示しがつかない。
中国当局が取り付け騒ぎを防ぎ、資本市場を安定化するために取れる措置は2つある。第1に、政府が中国恒大のステークホルダー(許を除く)を救済する意思を明確に示すことだ。対象は、関係する金融機関と従業員、そして中国恒大のマンションの購入契約をしたのに、まだ引き渡しを受けていない消費者。これは中国恒大の資産を他の会社に買い取らせることで可能になるはずだ。
第2に、政府は中国恒大の経営破綻に備えて、さまざまな余波を防ぐ緊急対策を用意していることを発表するべきだ。各金融機関の中国恒大へのリスクの割合を公表して透明性を確保するとともに、財政措置と金融措置を組み合わせて、何があっても金融システムを支えるという政府の意思と能力を強く示すのだ。
当局は既に、こうした措置を準備しているかもしれない。だが、その計画を公表すれば、政府の準備態勢と行動能力に対する不安を払拭して、市場のパニックに終止符を打つことができるはずだ。