先例はAPEC、WTO... 台湾のTPP加盟を実現させる秘策
多くの難題を退けて、蔡英文総統はTPP参加へ道筋をつけられるか AP/AFLO
<中国が激怒しているが、台湾にも希望はある。日本などTPP構成国が中国側に、台湾との同時加盟という条件を突き付ける可能性もある。一方、いかなる条件でも中国が台湾の加入を認めない可能性もある>
台湾は9月22日、日本など11カ国によるTPP(環太平洋連携協定)への加入を申請した。16日に加入申請した中国を牽制する動きだ。
台湾は中国よりも多くの点で、TPPの参加資格を満たしている。
TPPは労働者の権利や環境保護、政府補助金による国内産業の優遇の撤廃など、高いレベルの自由化を加入基準として設けている。台湾は米ヘリテージ財団による「経済自由度」指数で世界6位だが、中国は107位だ(TPP参加国の平均順位は31位)。
台湾の王美花(ワン・メイホア)経済部長(経済相)はこの点に触れて、中国がTPPの「厳しい基準を満たしているかは疑問」だと述べた。「中国は今も経済への不当な介入を繰り返し......正当な理由なく輸入を禁じている」とも指摘。
実際、台湾自身がこうした政治的介入の被害を受けている。
台湾は以前からTPP加入の意向を表明しており、アメリカも強く支持してきた。しかし今は、そのアメリカがTPPを離脱している。こうなると加入のハードルは高い。
それでも台湾メディアによれば、台湾は既に加盟国と水面下の交渉を始めている。加入に必要な法制の見直しも終えており、「必要な法改正の用意もある」(王経済部長)という。
台湾にとって一番の障壁は、中国の反対で制限されているその国際的地位だろう。
中国は台湾の国際社会への参加にとにかく反対してきた。「台湾独立を画策する分離主義者に誤ったサインを送る」というのが、その決まり文句だ。今回も中国外務省の趙立堅(チャオ・リーチエン)報道官が台湾の参加に「断固反対」だと息巻いている。
だが台湾にも希望はある。
例えばAPEC(アジア太平洋経済協力会議)には、台湾は「チャイニーズ・タイペイ」の名で加盟している。
これはAPECが国ではなく「エコノミー」の集まりと規定されているからだ。参加単位が「国」である場合、中国は台湾の参加を絶対に認めないが、「国」以外なら容認する可能性がある。
WTO(世界貿易機関)の場合、台湾は香港やマカオと並ぶ「独立関税地域」として加盟を認められた。
台湾は中国よりもはるか以前に加盟基準を整えていたが、台湾に先んじられるのを嫌った中国が政治力で加入を阻んでいた。結果的に、アメリカが折れて中国の加盟を認め、その後に台湾の加盟も許された。