最新記事

アメリカ社会

医療資源不足で年齢や人種による命の選別が始まった

Idaho Sued Over Using Rationing Medical Care

2021年9月29日(水)21時04分
ローレン・ギエラ

この数カ月で、ほかの複数の州でも同じような苦情申し立てがなされている。新型コロナウイルスのパンデミックが発生して以降、アリゾナ州、ユタ州とテキサス州北部の公衆衛生当局が非常時の治療計画を修正しており、ジャスティス・イン・エイジングやその他の障害者権利・公民権擁護団体が苦情を申し立てている。

アイダホ州は、医師が患者の生存見込みを判断するのを手助けする基準として、「SOFA(臓器不全評価)」スコアも導入している。

SOFAスコアは、患者の主要な臓器システムがどれだけ機能しているかを評価するものだ。だがジャスティス・イン・エイジングの弁護団は、エール大学の研究チームが最近実施した複数の研究で、患者が黒人の成人である場合、SOFAスコアでは生存見込みを正確に予測することはできないことが示されたと指摘している。

ジャスティス・イン・エイジングの訴訟担当ディレクターであるレーガン・ベイリーは、どの患者を優先するかの判断基準に年齢を用いることは、1975年の年齢差別禁止法や医療保険改革法に違反していると主張する。

「年齢の二重加算」とは

各種ガイドラインに定められている患者の評価方法には、加齢が人体に及ぼす影響という要素が既に加味されているとベイリーは指摘。患者の優先順位を決める基準として、その上さらに年齢を用いることは「年齢の二重加算」になり、高齢者を不利な状況に追い込むと主張した。

「州に対しては、年齢を独立した要素として判断基準に盛り込まず、SOFAスコアにも頼らないよう求める」とベイリーは述べ、さらにこう続けた。「命を救うことができる治療から、黒人を不当に遠ざけることが示されているツールが使われ続けていることを懸念する」

アイダホ州保健福祉省のスタールは、非常時治療計画の作成には、災害医療諮問委員会、州医療局、独立生活審議会、州検事総長事務局と保健福祉省をはじめとする複数の機関が関与したと述べ、これまでのところ、同州で患者の優先順位を決めるための判断基準が用いられたケースはないと説明。「そうした基準が必要になる状況は、きわめて稀だろう」と述べた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏とゼレンスキー氏が「非常に生産的な」協議

ワールド

ローマ教皇の葬儀、20万人が最後の別れ トランプ氏

ビジネス

豊田織機が非上場化を検討、トヨタやグループ企業が出

ビジネス

日産、武漢工場の生産25年度中にも終了 中国事業の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 4
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 7
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 10
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中