メルケルの後継者を決める現代ドイツの「キングメーカー」はこの男
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この歴史的敗北後に党首に就任したのがリントナーだ。女性の登用を増やし、守旧派を一掃し、党の伝統的な立場を捨てることなく現代的なイメージに刷新し、国内各地を視察して、地方メディアの取材を積極的に受けた。
おかげで前回17年の選挙の得票率は10%を超え、自由民主党は連邦議会に返り咲いた。さらに、CDUを中心とする連立交渉に参加したが、リントナーはここで、手ごわい交渉人であることを証明した。
2カ月に及ぶマラソン交渉で、メルケルと緑の党には大きな親和性がある一方で、議会に復活したばかりの自由民主党は足元を見られていると感じたリントナーは、その重点政策が尊重されないことを危惧して、合意直前で連立交渉を離脱したのだ。
今回の選挙で、自由民主党はドイツ経済の活性化を軸に、減税や官僚機構の縮小、年金制度改革などを重点的に訴えてきた。企業寄りの姿勢は、中道右派のCDUと相性がいい。特にメルケルの後継者であるラシェットは、リントナーの出身であるノルトライン・ウェストファーレン州の首相でもあり、2人は緊密な関係を構築してきた。
たとえCDUが第2党に下っても、自由民主党と緑の党は、SPDとの連立に参加する可能性がある(3党のシンボルカラーから「信号機連立」とあだ名される)。
SPDを率いるショルツは中道で、富裕層への増税や社会保障支出の引き上げを訴える左派党との連立は回避したいところだろう。左派党は、NATOなどアメリカの安全保障の傘の下に入ってきたドイツの伝統的な外交政策にも反対している。
今回は交渉の席を立たない
信号機連立も、政策に大きな隔たりがないわけではない。だが、自由民主党はドイツの左傾化を阻止する姿勢を明確にしており、リントナーが4年前のように連立交渉の席を途中で立つ可能性は低そうだ。今回は財務相の座を狙っているから、なおさらだ。
自由民主党は増税をしないこと、そして連邦債務の上限(GDPの0.35%以下)を緩和しない姿勢を変えるつもりはないとしてきた。ただ、大掛かりな投資を否定しているわけではなく、リントナーが財務相になれば、インフラや教育やデジタル化への投資を進めるだろう。
対EUで自由民主党は防衛面での連携拡大を支持する一方で、コロナ禍で進んだ債務の相互化(事実上のEU共同債の発行)を延々と続けたり、財政統合を急ぐことには反対している。