「新・日英同盟」の始まりを告げる英空母「クイーン・エリザベス」来航が残した宿題
先日横須賀に寄港した@RoyalNavy の最新空母クイーン・エリザベス@HMSQNLZ の艦載機F35B ライトニング II。短距離離陸垂直着陸(STOVL)が可能です。#CSG21 pic.twitter.com/HaHwL5TRL7
— UK in Japan (@UKinJapan) September 14, 2021
実験のための航海
まず、英国にとって空母の運用は2014年、軽空母「イラストリアス」が退役して以来のことであり、英国が6万5000トンという米国の空母に匹敵する大型の空母を実戦運用するのは初めてである。まして、その大型空母を英国の新戦略「グローバル・ブリテン」のもと、インド太平洋に進出させることも初めてであり、今回の航海は英国にとって多くの初体験を伴っている。
一口に空母を派遣すると言っても、空母の展開には防空や対潜水艦任務を専門とする随伴艦を含めた空母打撃群を編成しなくてはならない。今回の「クイーン・エリザベス」の航海には潜水艦を含めて10隻の艦艇が参加し、移動距離は4万8000キロ、3700人の乗組員が作戦に従事している。
そのような大規模の部隊が地球の裏側に展開するわけだから、当然ながら相当のコストとともに、航海中に時折、港に立ち寄り、乗組員の休養や艦艇の整備や修理、燃料や弾薬、食料の補給などを受ける必要があり、そのための寄港地を確保しなくてはならない。
ところが、世界中に基地を持つ米軍ならともかく、英国のインド太平洋での軍事的拠点は極めて限られており、現在ではオマーンのドゥクム、インド洋のディエゴ・ガルシア、シンガポールやブルネイ、オーストラリアに小規模の支援施設がある程度である。そのため、インド太平洋に展開した英国の空母打撃群は膨大な量の支援を派遣先の同盟国や友好国から提供してもらう必要がある。
また、英国から遠く離れたアジア地域で軍事作戦を指揮するためには衛星を介した地球規模の指揮通信、情報のシステム(C4ISR)を構築しなければならず、これも当面は米国との連携が必要になるだろう。
つまり、現在の英国の空母打撃群の展開は初めから同盟国との連携を前提にしたものであり、この点が単独で七つの海を支配したかつての大英帝国の海軍とは大きく違う点である。
例えば、今回、日本に来航した「クイーン・エリザベス」が搭載していたF35B戦闘機は英国空軍のものが8機なのに対して、米国本土から派遣された米海兵隊のF35Bは10機搭載されている。つまり、英米の混合編成にすることによって、空母の航空戦力を維持しているのである。
相互交換性
実は、英国のもともとの計画では、「クイーン・エリザベス」には12機ずつ2個飛行隊、計24機の英国空軍のF35Bが配備される予定だった。ところが、予算上の問題やF35Bの生産の遅れから、配備が大幅に遅れ、今回のインド太平洋展開に間に合わなくなった。(英国防省によれば、F35Bは2023年までに42機調達され、そのうち、24機が「クイーン・エリザベス」に配備される予定だという)