バイデンの失敗で、テロ組織をめぐる「力学」は9.11以前の状況に逆戻りした
WAR ON TERROR FAILING
カタールで行われたアメリカとタリバンの和平合意署名式(2020年) Ibraheem al Omari-REUTERS
<タリバンは復活し、アメリカはアフガン新政権やその協力国を罰せられず、新たなテロの時代の到来を許すことになった>
あれから20年――。2001年以来、米兵2000人以上の死に関わったテロリスト集団の旗が、再びアフガニスタンの首都カブールに翻ることになった。
アルカイダによる9.11テロの後、アメリカ主導で始まった対テロ戦争は、バイデン米大統領の就任以前から行き詰まりかけていた。その失敗はもはや、取り返しがつかないかもしれない。タリバン政権の復活を許したバイデンの歴史的ミスのせいだ。
バイデンはタリバンに力を与えることで、全ての暴力的なイスラム教組織を勢いづかせた。その結果、国際テロが再来するリスクは極めて高くなっている。
タリバン復活は、ジハーディスト(聖戦士)にとって近年最大の勝利だ。近いうちに各国の狂信者をかくまう「テロ超大国」が台頭し、テロ攻撃訓練を求めて世界中からイスラム主義者が集結するだろう。
タリバンの政権奪取の重大性と米政権の容認姿勢を曖昧にすべく、バイデンは「よいテロリスト」と「悪いテロリスト」という見せ掛けの線引きを試みている。
過激派組織「イスラム国」(IS)傘下のグループ「ISホラサン州(IS-K)」はタリバンの大敵だと、バイデンは主張する。8月26日、カブール空港周辺で自爆テロ事件が起きた際にはIS-Kの犯行とし、即座にタリバンを無罪と見なした。
「タリバンとアルカイダは今も密接な関係」
だがタリバンとIS-K、アルカイダはイデオロギーを共有し、いずれも暴力的ジハード(聖戦)に傾倒する。米国防総省が認めたように、全土を支配下に置いたタリバンは服役中だったIS-Kメンバー数千人を釈放した。一方で国連安保理の最近の報告書によれば、「タリバンとアルカイダは今も密接な関係にある」。
米国務省は、タリバンとその一部門で最強硬派のハッカニ・ネットワークは「別個の存在」だという認識を広めようとしてきた。だが実際には、両者はアフガニスタンにおけるパキスタンの「ディープステート(国家内国家)」だ。
ハッカニ・ネットワークの指導者シラジュディン・ハッカニはタリバンの副司令官で、9月7日に樹立が宣言されたアフガニスタン暫定政権の内相代行に就任した。それに先立つ同月4日、カブールをパキスタン軍統合情報局(ISI)のハミード長官が訪れている。アフガニスタンでの真の勝者は、事実上の代理政権を誕生させたパキスタンであることを浮き彫りにする事実だ。