後退するアメリカーー米中首脳電話会談で「一つの中国」を認め、ウイグル問題を避けたバイデン
習近平国家主席とバイデン副大統領(2013年) REUTERS/Lintao Zhang
9月9日、バイデンは習近平に電話を掛けて「衝突を避けたい」旨の意向を伝えたと日本では報道されているが、バイデンは本当は何と言ったのか、何を言わなかったのか。米中双方の公式報道から読み解く。
日本での報道
日本での報道は、たとえば9月10日の時事通信社の「衝突回避で双方に責任 中国主席と電話会談 米大統領」などが一般的で、【ワシントン、北京時事】という米中双方の情報から書かれているので読み解きやすい。
それによれば、ホワイトハウスは、米中間の競争を紛争に転じさせないための「両国の責任」について議論し、両首脳は利益が重なる分野と、利益や価値観、視点の異なる分野について「広範な戦略的議論」を行ったとのこと。また、バイデンは習近平に対し、インド太平洋地域と世界の平和や安定、繁栄に関する米国の揺るぎない利益を強調したともある。
一方、中国共産党機関紙・人民日報(電子版)によると、習近平は「一時期から米国が取る対中政策は中米関係に著しい困難をもたらした。これは両国民の根本的利益や世界各国の共通利益に合致しない」と批判したとある。その上で、「中米関係を安定的発展という正しい軌道に早く戻すべきだ」と訴え、気候変動、新型コロナ、経済回復、「重大な国際・地域問題」の各分野で協力を呼び掛けた。
以上が概ねの日本の報道だ。
中国における公式報道
中国側の正式報道は、中国の外交部にある「習近平がアメリカ大統領を電話会談した」が最も信憑性が高い。これが間違っていればアメリカから直ちに修正が求められる。今のところそのような動きはないので、間違っていないものと解釈することができる。
では、習近平は何を言ったかを先ず見てみよう。
習近平:
1.(8月29日にルイジアナ州で起きた)ハリケーン「アイーダ」に関するお見舞いの言葉を述べた(バイデンは謝意を表した)。
2.ある時期以来、アメリカの対中政策は中米関係に深刻な困難をもたらしており、これは両国人民の根本的な利益と世界各国の共同利益に反する。
3.中国は最大の発展途上国で、アメリカは最大の先進国だ。したがって中米両国が互いの関係をうまく処理できるか否かは、世界の未来と命運を左右する大きな問題であり、両国が良い解答を出さなければならない世紀の問題である。中米が協力すれば、両国と世界は利益を得ることができる。中米が対抗すれば、両国と世界はともに苦しむことになる。米中関係は、「正しいかどうか」という多肢選択式の問題ではなく、「どうすれば正しいか」という必答式の問題だ(筆者注:最後の言葉は分かりにくいが、西側諸国には対中包囲網を呼びかけながら習近平に対しては「きれいごとを言う」バイデン政権に対する習近平の不満を表していると解釈できる)。