最新記事

北朝鮮

弾道ミサイルより防護服?北朝鮮「平和的」パレードの異変

South Korea 'Closely' Tracks DPRK Parade Featuring Dogs, Horses, Gas Masks

2021年9月10日(金)19時43分
トム・オコナー
北朝鮮パレードのPPE部隊

異例のパレードには、新型コロナ予防用のPPE(個人防護具)の部隊も(9月9日、平壌) KCNA/REUTERS

<金正恩による演説も戦略兵器の登場もなしの「地味パレード」が映し出す厳しい国内事情>

韓国軍の関係者は、北朝鮮が9月9日未明に行った軍事パレードを注視していたと本誌に語った。金正恩が北朝鮮の最高指導者に就任してからまもなく10年。この間、北朝鮮と韓国は対立と緊張緩和を繰り返し、両国関係はいまだ不安定なままだ。

韓国国防省の報道官は「韓国軍は北朝鮮の軍事パレードを注意深く見守っている」と本誌に語った。「アメリカと協力の下、詳細な分析を行っているところだ」

在韓米軍も、このパレードに注目していた。在韓米軍の報道官であるリー・ピーターズ大佐は、本誌の取材に次のように語った。「北朝鮮が最近、軍事パレードを実施したことは認識している。我々としては、韓国をあらゆる脅威や敵対勢力から守るために、引き続き協力して防衛態勢を取っていく」

北朝鮮はこれまで幾度も軍事力を誇示してきたが、建国73周年を記念して9日未明に実施されたパレードは、異色と言えるものだった。最新型のミサイルや戦闘能力を誇示してきた過去の軍事パレードに比べて、かなり控えめな内容だったのだ。

軍用犬や防疫隊が行進

パレードは金正恩がバルコニーから見下ろす平壌の金日成広場で行われ、馬に乗った騎兵部隊、軍の捜索犬を伴った兵士たちや、新型コロナ対策様のオレンジ色の防を身につけた防疫隊などが隊列を組んで行進した。

ロケットをけん引していたのは、これまでのような軍用トラックではなく、北朝鮮の国営メディアである朝鮮中央通信によれば、「非常事態に侵略者やその配下にある部隊を圧倒的な火力で砲撃するための兵器を積んだトラクター」だった。

複数の報道によれば、金正恩は演説しなかったが、「歓声をあげる熱狂的な市民に温かく応じていた」ということだ。

朝鮮中央通信は、最高指導者である金正恩を熱烈に称賛。「唯一無二の英雄であり、我が国が繁栄する新時代を体現し、その熱烈な愛情と自己犠牲の精神で国と国民に向き合い、国家第一主義の金正恩朝鮮労働党委員長に対して、パレードに参加した全員が、最大限の賛美と深い感謝の念を示した」と報じた。

金正恩体制がまもなく10年を迎える一方で、韓国の文在寅大統領は2022年5月に任期満了を迎える。そしてアメリカでは、ジョー・バイデン大統領が就任1年目にして、既に国内で複数の厄介な問題に、そして国外ではさらに差し迫った外交上の問題に直面しており、こうした状況を鑑みると、朝鮮半島は今後もしばらく不安定な状況が続きそうだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ゼレンスキー氏「ウクライナに耳を傾けて」、会談決裂

ワールド

インド10─12月GDP、前年比+6.2%に加速 

ビジネス

中国2月製造業PMIは50.1、3カ月ぶり高水準 

ワールド

韓国輸出、2月は1%増に回復も予想下回る トランプ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:破壊王マスク
特集:破壊王マスク
2025年3月 4日号(2/26発売)

「政府効率化省」トップとして米政府機関に大ナタ。イーロン・マスクは救世主か、破壊神か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天才技術者たちの身元を暴露する「Doxxing」が始まった
  • 3
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性【最新研究】
  • 4
    ボブ・ディランは不潔で嫌な奴、シャラメの演技は笑…
  • 5
    米ロ連携の「ゼレンスキーおろし」をウクライナ議会…
  • 6
    イーロン・マスクのDOGEからグーグルやアマゾン出身…
  • 7
    米ウクライナ首脳会談「決裂」...米国内の反応 「ト…
  • 8
    「絶対に太る!」7つの食事習慣、 なぜダイエットに…
  • 9
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
  • 10
    東京の男子高校生と地方の女子の間のとてつもない教…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チームが発表【最新研究】
  • 3
    障がいで歩けない子犬が、補助具で「初めて歩く」映像...嬉しそうな姿に感動する人が続出
  • 4
    富裕層を知り尽くした辞めゴールドマンが「避けたほ…
  • 5
    イーロン・マスクへの反発から、DOGEで働く匿名の天…
  • 6
    イーロン・マスクのDOGEからグーグルやアマゾン出身…
  • 7
    「絶対に太る!」7つの食事習慣、 なぜダイエットに…
  • 8
    東京の男子高校生と地方の女子の間のとてつもない教…
  • 9
    日本の大学「中国人急増」の、日本人が知らない深刻…
  • 10
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 3
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 6
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 7
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 8
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 9
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 10
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中