最新記事

北朝鮮

弾道ミサイルより防護服?北朝鮮「平和的」パレードの異変

South Korea 'Closely' Tracks DPRK Parade Featuring Dogs, Horses, Gas Masks

2021年9月10日(金)19時43分
トム・オコナー

文在寅はこれまで、歴史的な数の南北朝鮮首脳会談を取り仕切ってきた。その全てが、バイデンの前任者であるドナルド・トランプが現職の米大統領として初めて、北朝鮮の指導者と会談を行ったのと同じ、2018年に行われたものだ。しかし翌2019年2月の米朝首脳会談で、(アメリカによる北朝鮮の)体制保障と引き換えの非核化や対北朝鮮制裁の緩和についての合意がまとまらなかったことで、交渉の機運は失われた。

そして過去2年の間に、再び緊張が高まってきている。金正恩は核実験や大陸間弾道ミサイルの発射実験をまだ再開してはいないが、自分にはそれを行う自由があると宣言している。

それでも、北朝鮮も韓国も公式には、和解と再統一を模索している。7月には北朝鮮と韓国の軍当局が通信回線を復旧させることで合意し、関係改善の兆しが示された。だが8月には北朝鮮の当局者たちが、韓国によるアメリカとの合同軍事演習実施の決断を激しく非難し、再び緊張が高まった。

バイデン政権は北朝鮮との外交交渉を模索していく意欲を示しているが、アメリカはいかなる挑発行為にも相応の対処をすると警告もしている。9日の軍事パレードは、バイデンが1月に大統領に就任して以降、初めての挑発行為の類となる。平壌ではバイデンの就任直前にも、第8回朝鮮労働党大会を記念する壮大なパレードが行われた。

危機感が伺える党書記の演説

その後、金正恩は公の場で行った複数の発言の中で、北朝鮮が危機に見舞われていることを認め、「苦難の行軍」という言葉まで使った。この言葉は、正恩の父親である金正日が最高指導者だった1990年代半ば、朝鮮労働党が国民に、当時の飢饉と経済的苦境を乗り越えようと呼びかけた際のスローガンとして知られている。

また北朝鮮は、いまだ新型コロナウイルスの感染例を1例も報告していない世界で5つしかない国の1つだが、今も厳しいロックダウンと隔離措置を取っている。2021年はじめに隣国である中国で新型コロナの感染が拡大した際、国境を閉鎖した最初の数カ国のうちの1つでもあった。ワクチンの提供をはじめ、海外からの支援の申し出も一切受け入れていない。

9日の軍事パレードで演説を行ったのは、李日煥党書記だった。李は演説の中で、「国と国民が一心団結の威力で現在の難局を乗り切り、社会主義建設の新たな高潮期、激変期を切り開いていく」と述べた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ、鉱物資源協定まだ署名せず トランプ氏「

ビジネス

中国人民銀総裁、米の「関税の乱用」を批判 世界金融

ワールド

米医薬品関税で年間510億ドルのコスト増、業界団体

ワールド

英米財務相が会談、「両国の国益にかなう」貿易協定の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 3
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは?【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 7
    ビザ取消1300人超──アメリカで留学生の「粛清」進む
  • 8
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 1
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中