最新記事

アフガン情勢

国外脱出のチャーター機をタリバンが足止め?──「事実上の人質状態」と米議員

Taliban Hold Planes Full of Evacuees as Congressman Talks of 'Hostages'

2021年9月6日(月)14時15分
ジェイソン・レモン

スポーツを通じて若い女性リーダーの育成を目指す非政府組織(NGO)アセンドの話としてCBSが5日、伝えたところによれば、航空機での出国を希望しながら足止めされている数百人の中には、アセンドの関係者(アメリカ人19人と永住権保有者2人)も含まれているという。

「注目が集まることが解決に向けた圧力につながればと思う。米軍撤退後6日間におよぶ交渉でも光は見えていない」と、アセンドのマリナ・ルグリー専務理事はCBSに語った。

ルグリーは本誌の取材に対し、アセンドはタリバンとも国務省とも直接のやりとりはしていないと述べた。航空会社とタリバンの間で金額交渉が行われているようだが、結果は分からないという。

またルグリーは、国務省か国家安全保障会議(NSC)が、カタール経由でタリバンとの間に存在する「さまざまなルートを使い、何らかのコネを使って行動を起こさせる」ことを期待していると述べた。

「わが国の政府は公式にはアフガニスタンから去ったかも知れないが、こうした関係が一夜にして消えるわけではない。タリバンに正しい対応をさせ、何の罪もない人々を空路脱出させるため、非公式なルートでの話し合いが必要だ」とルグリーは述べた。

残るアメリカ人は約100人

バイデンは8月末の駐留米軍の完全撤退により約20年にわたるアフガニスタンでの戦争に終止符を打った。だが撤退は混乱を招き、バイデンはさまざまな批判を受けている。だが完全撤退を決めたのはバイデンではなくドナルド・トランプ前大統領の政権だ。

トランプ政権は昨年2月、今年5月末までに米軍を完全撤退させるという内容の和平合意をタリバンとの間で結んだ。バイデンは大統領に就任後、いったんは撤退期限を9月11日まで延ばしたが、その後8月末に前倒し。ところが8月半ば、タリバンがアフガニスタンの実権をほぼ掌握してしまった。

それでもまだ、首都カブールの国際空港は米軍のコントロール下にあった。それから半月の間に、アメリカは約11万6000人を避難させた。その中にはアメリカ人もいれば同盟国の国民も、数千人のアフガニスタン難民もいた。だが、中には脱出を望みながら取り残されたアメリカ人もいた。

「アフガニスタンでは少数のアメリカ人──200人未満、たぶん100に近い数だろうが、出国を望みながらまだ国内に残っているとみられる」と、アントニー・ブリンケン米国務長官は8月30日の記者会見で述べた。「その正確な数を確認しようとしている最中だ。搭乗者名簿を調べたり、こちらのリストにある人々に電話したりメッセージを送ったりしている。できるだけ早く詳細をつかみ、情報共有をしたい」

ロナルド・クレイン大統領首席補佐官は5日、CNNに対し、アフガニスタン国内に残っているアメリカ人の数は「約100人」だと述べた。

20250408issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年4月8日号(4月1日発売)は「引きこもるアメリカ」特集。トランプ外交で見捨てられた欧州。プーチンの全面攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

マスク氏、政権ポストから近く退任も トランプ氏が側

ワールド

ロ・ウクライナ、エネ施設攻撃で相互非難 「米に停戦

ビジネス

テスラ世界販売、第1四半期13%減 マスク氏への反

ワールド

中国共産党政治局員2人の担務交換、「異例」と専門家
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台になった遺跡で、映画そっくりの「聖杯」が発掘される
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 7
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 8
    博士課程の奨学金受給者の約4割が留学生、問題は日…
  • 9
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 10
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 7
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 8
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 9
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 10
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中