最新記事

人権問題

ロシア、失われるLGBT+の生命線 当局が関連サイトに弾圧

2021年9月7日(火)12時09分
LGBTQの集会を警備するロシア当局者

ロシアが各都市で性的少数者によるパレード「プライド・マーチ」を禁止し始めると、「ロシアLGBTネットワーク」のミヒャイル・ツマソフさんはインターネットで情報発信を続けようと考えた。写真は2019年8月、ロシア・サンクトペテルブルクで行われたLGBTQの集会を警備する露当局者(2021年 ロイター/Anton Vaganov)

ロシアが各都市で性的少数者によるパレード「プライド・マーチ」を禁止し始めると、「ロシアLGBTネットワーク」のミヒャイル・ツマソフさんはインターネットで情報発信を続けようと考えた。しかし、ロシアの当局はこの動きにすぐ追い付いた。

ツマソフさんによると、ロシアのネット規制当局はこの団体のサイトを何度も閉鎖しようと試みた。当局が盾に取ったのは、2013年に成立した「反ゲイ・プロパガンダ」法。LGBT+(性的少数者)に関する情報が子どもに広がることを禁じている。

団体は法廷に異議を申し立て、今のところ成功している。ツマソフさんはトムソンロイター財団の電話取材に、「従ってわれわれのウェブサイトはまだ残っており、社会におけるわれわれの居場所も維持されている。しかし、誰もがこのように成功しているわけではない」と語った。

3つの人権団体が今週、世界の状況をまとめた報告書を公表した。それによると、2016年半ばから20年半ばにかけ、ロシアでは32のLGBT+のサイトがプロバイダー上で1回以上アクセスできなくなった。

「アウトライト・アクション・インターナショナル」、「トロント大学市民ラボ」、「ネットワーク干渉オープン監視団(OONI)」の3団体がまとめた同報告書は、「最も頻繁にアクセスできなくなるのはLGBTIQ関連のニュースサイトで、次いで文化、人権関連のサイトだ」としている。

ロシアでは同性間の交際関係は合法だが、性的区別や性同一性に対する姿勢は今でもおおむね保守的だ。

同国は2020年の国民投票により、異性間の結婚しか認めない憲法改正が承認された。これにより、同性婚を支持する法律を将来制定する道は事実上閉ざされた。

トロント大学市民ラボの調査幹部、イレーネ・ポエトラント氏は、「政府はさまざまな方法でLGBTIQのウェブサイトをふるいにかける。法的手段と技術的手段を用いるのが典型的だ」と話した。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

脅迫で判事を警察保護下に、ルペン氏有罪裁判 大統領

ビジネス

貿易分断で世界成長抑制とインフレ高進の恐れ=シュナ

ビジネス

テスラの中国生産車、3月販売は前年比11.5%減 

ビジネス

訂正(発表者側の申し出)-ユニクロ、3月国内既存店
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 8
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 9
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 10
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中