最新記事

人権問題

ロシア、失われるLGBT+の生命線 当局が関連サイトに弾圧

2021年9月7日(火)12時09分

「国家安全保障上の危険」

報告書はロシアのほか、インドネシア、マレーシア、イラン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)に焦点を当てている。ポエトラント氏によると、これら6カ国を選んだのは、LGBT+関連のコンテンツを監視していることが分かっている国々だからだ。

報告書によると、こうしたサイトを禁じることは、「市民的及び政治的権利に関する国際規約(ICCPR)」の第19条に違反している。インドネシア、イラン、ロシアの3カ国はICCPRの署名国だ。

ICCPRは「すべての者は、表現の自由についての権利を有する。(中略)国境とのかかわりなく、あらゆる種類の情報及び考えを求め、受け及び伝える自由を含む」と定めている。

報告書によると、6カ国のうちLGBT+関連のサイトにアクセスできないようにした件数が最も多かったのはイラン(75件)で、次いでUAE(51件)だった。

インドネシア政府は5年前、LGBT+のサイト禁止に動くと表明。報告書によると、現在少なくとも38のサイトが閲覧できない。

「LGBTIQコミュニティは政府から、国家安全保障にとって危険であり、社会を織り成す倫理的結束を脅かすものとして位置づけられている」と、リニ・ズーリアさんは電子メールでロイターにコメントした。リニ・ズーリアさんはインドネシアにあるLGBT+の団体で活動している。

ロシアのツマソフさんは、LGBT+の人たちにとってインターネットは欠かせない社会的な生命線になっており、その弾圧は差別と人権無視を反映していると語る。「LGBTIコミュニティの言論の自由は、同性愛を嫌悪する人たちからの多大な脅威に苦しんでいる」と、ツマソフさんは話す。

(Hugo Greenhalgh記者)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・誤って1日に2度ワクチンを打たれた男性が危篤状態に
・インド、新たな変異株「デルタプラス」確認 感染力さらに強く
・世界の引っ越したい国人気ランキング、日本は2位、1位は...


今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中