AUKUSは対中戦略に有効か?──原潜完成は2040年、自民党総裁候補の見解
「環球網」ではアメリカの報道を引用して、以下のように述べている。
――EUとオーストラリアは2018年以降、貿易協定に関する交渉を11回にもわたって行っており、キャンベラ(オーストラリアの首都)は年内の合意に達するものと見込んでいた。欧州委員会は27の加盟国を代表して貿易交渉を行う独占的な権限を持っている。 しかし実際には、フランスが公然と反対していては、ブリュッセル(EUの拠点)は交渉を妥結させることができない。(略)フランスの支援がなければ、欧州委員会は、豪・EU貿易協定の中核となっている「豪農家の牛肉および乳製品への特恵市場アクセス」を提供することはできない。欧州議会・国際貿易委員会のランゲ委員長(ドイツ)は「EUとオーストラリアの貿易協定の交渉が問題になっているのは、フランスの反対だけでなく、ドイツの利益を損ない、反EUの産業政策のシグナルを送っているオーストラリアの最近の行動が原因だ」と述べている。
この「ドイツの利益を損なっている」というのは具体的には何を指すかに関して、中国の知識層に信頼されているウェブサイト観察者網がアメリカのメディア報道を引用して<米メディア:豪EU自由貿易協定交渉、フランスの反対により「潜水艦問題」で破局か>の中で説明している。
それによれば、上記のドイツ人であるランゲ委員長は「今回の合意(=AUKUSの米英豪合意)は、ドイツのティッセン・クルップ・マリン社(Thyssen Krupp Marine)の子会社で、潜水艦や重型魚雷用のソナーシステム(水中音波探知)開発を手がけるアトラス・エレクトロニック社(Atlas Elektronik)にも影響を与えるものだ」と指摘しているとのこと。
その後バイデン大統領はフランスのマクロン大統領に電話会談を申し入れ、謝罪の意思を表したようだが、それで問題が解決するというわけではないことを、ランゲ委員長の発言は示唆している。EUに最も大きな力を持っていたドイツは今、メルケル首相の退任により次期政権の選挙が行われたばかりで、どの政党がどのような連立を組むか混戦模様にある。したがって豪・EU自由貿易協定のゆくえにも不確定要素があるが、豪・EU自由貿易協定の成立に暗雲が立ち込めたことは確かだろう。
オーストラリアの最大貿易国は中国
同じく中国の知識人に人気のあるウェブサイト「知乎」は<フランスを怒らせてでもAUKUSに参加して原潜を買いたいというオーストラリアの反中原動力はどこから来るのか?>という見出しで、オーストラリアの原潜製造の動機を分析している。
この報道では、「オーストラリアはオセアニアで最も大きく、最も人口が多い国(2500万人)で、伝統的にオセアニア諸国のボス的存在でいなければ気が済まないという気持ちを持っており、おまけにファイブ・アイズ(アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド)の一員なので、イギリスがEUから離脱した今、そのプライドが刺激されてアングロサクソン系の連携を見せつけたいのだろう」と分析している。