最新記事

中国

AUKUSは対中戦略に有効か?──原潜完成は2040年、自民党総裁候補の見解

2021年9月28日(火)16時55分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

「環球網」ではアメリカの報道を引用して、以下のように述べている。

――EUとオーストラリアは2018年以降、貿易協定に関する交渉を11回にもわたって行っており、キャンベラ(オーストラリアの首都)は年内の合意に達するものと見込んでいた。欧州委員会は27の加盟国を代表して貿易交渉を行う独占的な権限を持っている。 しかし実際には、フランスが公然と反対していては、ブリュッセル(EUの拠点)は交渉を妥結させることができない。(略)フランスの支援がなければ、欧州委員会は、豪・EU貿易協定の中核となっている「豪農家の牛肉および乳製品への特恵市場アクセス」を提供することはできない。欧州議会・国際貿易委員会のランゲ委員長(ドイツ)は「EUとオーストラリアの貿易協定の交渉が問題になっているのは、フランスの反対だけでなく、ドイツの利益を損ない、反EUの産業政策のシグナルを送っているオーストラリアの最近の行動が原因だ」と述べている。

この「ドイツの利益を損なっている」というのは具体的には何を指すかに関して、中国の知識層に信頼されているウェブサイト観察者網がアメリカのメディア報道を引用して<米メディア:豪EU自由貿易協定交渉、フランスの反対により「潜水艦問題」で破局か>の中で説明している。

それによれば、上記のドイツ人であるランゲ委員長は「今回の合意(=AUKUSの米英豪合意)は、ドイツのティッセン・クルップ・マリン社(Thyssen Krupp Marine)の子会社で、潜水艦や重型魚雷用のソナーシステム(水中音波探知)開発を手がけるアトラス・エレクトロニック社(Atlas Elektronik)にも影響を与えるものだ」と指摘しているとのこと。

その後バイデン大統領はフランスのマクロン大統領に電話会談を申し入れ、謝罪の意思を表したようだが、それで問題が解決するというわけではないことを、ランゲ委員長の発言は示唆している。EUに最も大きな力を持っていたドイツは今、メルケル首相の退任により次期政権の選挙が行われたばかりで、どの政党がどのような連立を組むか混戦模様にある。したがって豪・EU自由貿易協定のゆくえにも不確定要素があるが、豪・EU自由貿易協定の成立に暗雲が立ち込めたことは確かだろう。

オーストラリアの最大貿易国は中国

同じく中国の知識人に人気のあるウェブサイト「知乎」は<フランスを怒らせてでもAUKUSに参加して原潜を買いたいというオーストラリアの反中原動力はどこから来るのか?>という見出しで、オーストラリアの原潜製造の動機を分析している。

この報道では、「オーストラリアはオセアニアで最も大きく、最も人口が多い国(2500万人)で、伝統的にオセアニア諸国のボス的存在でいなければ気が済まないという気持ちを持っており、おまけにファイブ・アイズ(アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド)の一員なので、イギリスがEUから離脱した今、そのプライドが刺激されてアングロサクソン系の連携を見せつけたいのだろう」と分析している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日本製鉄、山陽特殊製鋼を完全子会社に 1株2750

ワールド

ノルウェーで欧州懐疑派政党が政権離脱、閣僚の半数近

ビジネス

日経平均は小幅に3日続伸、方向感欠く 個別物色は活

ビジネス

午後3時のドルは154円台を上下、トランプ関税や日
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 4
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 5
    東京23区内でも所得格差と学力格差の相関関係は明らか
  • 6
    ピークアウトする中国経済...「借金取り」に転じた「…
  • 7
    「やっぱりかわいい」10年ぶり復帰のキャメロン・デ…
  • 8
    フジテレビ局員の「公益通報」だったのか...スポーツ…
  • 9
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 10
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 4
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 5
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 6
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 7
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 8
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 9
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 10
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 5
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 9
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 10
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中