まるで敗戦直後の日本軍を奪い合う中共軍──米大使館存続望むタリバン
アフガニスタンからの米軍撤収は、もともとトランプ前大統領による「タリバンとの和平合意」から始まったことなのだから、「タリバン・アメリカ」が「和平合意」を軸に動くのは、そう不思議なことではない。
教育の向上と技術者養成が焦眉の急
中国のウェイボー(weibo、微博)に、おもしろいエピソードが書かれていた。
カブールにはチャイナタウンがあるが、そこにいる中国人の商人が、8月26日にタリバン政府の事務所に、ある許可証をもらうために行ったそうだ。すると守衛がいそいそとやってきて「何かご用ですか?」と丁寧な態度で尋ねた。通訳が「この人は中国人だ」と言うと、すぐさま「どうぞお入りください」と中に案内してくれたという。用向きを話すと、これがまたすぐさま許可証にサインしてくれて、ものの数分もせずに政府の事務所から出ることができた。
そこで、その許可証を持って空港に行くと検問があり、タリバンの兵士に質問された。許可証を見せたのだが字が読めないらしく、邪険に扱われて、なかなか空港内に入れない。それからすったもんだあり、いつまでも空港に入れないで困り果てていたところに、いきなり空港での大爆発があり、その人は一命をとりとめたというお話だ。
中国では「危機一髪だったねぇ!」という意味で話題になったが、これを通して見えるのは、アフガニスタンにおける教育水準の劣悪さだ。タリバン兵には字を読めない者が多く、アフガニスタン全体の識字率も非常に低い。
アメリカがアフガニスタンにある銀行を凍結させているので、お金を引き出すこともできない。そうでなくとも悲惨な経済状況にあるので、このままでは又テロの温床になっていく。
テロを生まないようにするためには教育をいきわたらせて経済発展を促すしかない。そうしなければ世界が又テロで脅かされる日々がやってくる。それを防ぐために、日本にもやれることはいくらでもある。
タリバンを助けるというのではなく、世界をそして日本を今後のテロから守るために日本に何ができるかという視点で考えたとき、アフガニスタン人の教育の向上と技術者養成は、焦眉の急であるかもしれない。
このウェイボー情報は、ふとそのようなことに目を向けさせてくれた。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。
[執筆者]遠藤 誉
中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史 習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』(ビジネス社、3月22日出版)、『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』、『激突!遠藤vs田原 日中と習近平国賓』、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』,『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。
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