タリバンと米軍が「反テロ」で協力か──カブール空港テロと習近平のジレンマ
つまり、8月15日のコラム<タリバンが米中の力関係を逆転させる>で書いたように、もしアメリカができなかった「アフガニスタンからテロを無くした上でアフガニスタンを経済成長させる」という秩序形成を、今後中国が成し遂げることができたとすれば、世界は中国の方が国際社会の統治能力があるとして、アメリカより中国を高く評価する可能性が出てくるという「恐るべき現実」が横たわっていると指摘した。
しかし、テロが起きたことによって、なんと、「タリバンとアメリカが協力してテロ組織を打倒する」という構図になったら、これは「前代未聞の構図」で、結局、アメリカが強かったということにつながっていく。
これでは習近平のメンツがつぶれてしまうのではないのか?
それでも絶対に軍事介入できない中国
こんな格好のつかないことになっても、中国にはアフガニスタンに軍事介入できない事情がある。
イスラム教徒が多い新疆ウイグル自治区を抱えているからだ。
習近平はウイグル族が「東トルキスタン・イスラム運動」という過激派テロ集団に流れるのを防ぐために、ウイグル族を100万人ほど「教育のため」と銘打っている収容施設に入れて思想教育を強化している。つまり思想的弾圧を断行しているのだ。
それだけでも本来ならイスラム過激派の攻撃対象となってもおかしくはない。だから2014年までは中国国内でも頻繁にテロ事件が起きた。今は徹底した監視と弾圧を実行しているので2016年以降は起きていない。
もし中国が「反テロ戦争」のために他国であるアフガニスタンに軍事介などしたら、今度は中国がISISのターゲットとなって攻撃されるのは確実だろう。
習近平の最大の国家目標は、中国共産党による一党支配の安全な維持だ。
ISISのターゲットとなったりしたら、第二の「9・11」事件が今度は中国で起こり、一党支配体制が崩壊する危険性がある。だから習近平としては、絶対に軍事介入はしない。習近平がやろうとしているのは、タリバンがテロ活動を絶対にアフガン地区で起こさせないという保障を見定めたら、国家として承認して「一帯一路」に加盟させ、経済交流をしていくということなのである。
テロ事件は結果的にタリバンに利する?
上記のCCTV特集番組で、崔氏は以下のような解説を行っている。