崩れ去った菅首相の再選構想 岸田元政調会長が出馬表明、秋の政局は不透明に
コロナ対策が最大の争点となった今月22日の横浜市長選挙で、菅氏肝入りの小此木八郎元国家公安委員長が大差で敗れた衝撃は、党内でいまだ収まっていない。自民党が今月実施した衆院選の議席予測で、最大70議席程度を失い、単独過半数を割り込むとの結果が出たことも、党内の不安に拍車をかけている。
「首相が菅氏の体制で衆院選に突入するのは自殺行為」と、ある中堅幹部は言う。
そもそも安倍・麻生・二階各氏らの首相続投支持も党内では額面通り受け取らない向きがある。総裁選には高市早苗元総務相と下村博文政調会長も出馬意向を公にしており、「安倍さんの本音は高市さんと岸田さん。高市さんの参戦で右より層からの盛り上がりを演出し、しかし落としどころはバランスの取れた岸田さんとすることで、衆院選に備えるつもりだろう」と、安倍氏に近い中堅幹部は解説する。
このため党内には、総裁選で首相が岸田氏に敗れる可能性が十分あるとみて、「負けるぐらいなら菅さんは出馬そのものを辞退する方が美しい引き際でないか」(閣僚周辺)との声も一部で出つつある。一方、「デジタル庁設立やダム改革による治水能力の向上など首相の縦割り打破の実績がもっと評価されるべき」(官邸)として首相続投の実現を目指す声も聞かれる。
河野太郎、石破茂への待望論も
選挙基盤の弱い若手・中堅を中心に、岸田氏より国民的な人気の高い河野太郎行政改革相や、石破茂元幹事長に対する待望論も根強い。両氏とも出馬への明言を控えており、石破氏は23日、「出るとか出ないとか言っていない」などと語った。
国内政治に詳しい立教大学社会学部の砂川浩慶教授(メディア論)は、「党内のロジックで岸田さんが選ばれても、岸田さんがコロナ対策を発信した記憶がない」と話す。「石破さんなど国民的に人気のある人を選ばないと失われた支持層の回復は難しいのでは」と指摘する。
竹本能文 編集:久保信博
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