「金鉱の上に横たわる貧者」―アフガンの地下資源と中国
中国企業に関しては「中国石油」や「中冶集団」などの名前が見られるが、これらは中国独自の情報として記入したものと思う。ここでは銅鉱山に関してご紹介する。
アフガン最大級の銅鉱山を早くから中国が押さえていた
実は銅鉱に関しては、2008年に中国冶金科工集団(中冶集団)と江西銅業集団が新たなコンソーシアム(共同事業体)を形成したとき、アフガニスタン政府はこのコンソーシアムがアフガニスタンの経済発展を後押ししてほしいと大きな期待を寄せていた。
そのためアフガン最大の銅山であるメス・アイナク銅鉱山(Mes Aynak)(世界で2番目に大きい未開発の銅鉱床)に関して、アフガニスタン政府は中国に「2008年から、30年間の採掘権」を与えているが、紛争が多く開発はなかなか進まなかった。
2016年6月2日になると、中冶集団は中国五鉱集団に併合された(鉱は中国語では石偏)。
これは、2015年12月8日に国務院の国有資産監督管理委員会が世界に並び立つ企業を創設するための戦略的再編を行った線上にあるが、事実、五鉱集団はフォーチュン500社に選ばれている。五鉱集団は探査から高度な処理まで、サプライチェーンのすべての部分に精通した巨大企業となり、2016年にはアフガニスタン政府との契約が更新された。契約ではアフガニスタン政府への手厚い保険料やロイヤリティの支払いが約束されているだけでなく、現地で緊急に必要とされている鉄道や発電所などのインフラの建設も約束されていた。
前述の中国商務部を中心とした「報告書」にあるアフガン地下資源分布と開発現状のマップには、「五鉱集団」ではなく、「中冶集団」の企業名があることから、このマップは少なくとも2016年以前の情報に基づいていることが分かる。
もっとも、これも長引く紛争で実行に移されることはなかったのだが、「2016年半ば」に転機が訪れた。
「2016年」からタリバンと中国が取引開始
実は2016年にタリバンにとって衝撃的な事件が起きた。
2016年5月21日にタリバンの最高指導者だったアクタル・マンスール師が米軍によって殺害されたのだ。殺害を命じたのはオバマ元大統領。これによりタリバンを和平交渉の席に就かせようとしていた機運は遠のき、タリバン代表がその2ヵ月後の7月18日から22日まで北京を訪れ、中国に救いを求めている。
「外国の軍隊により占領されている屈辱」を訴え、「国際会議で取り上げてほしい」と中国に要望した。