最新記事

アフガニスタン

「金鉱の上に横たわる貧者」―アフガンの地下資源と中国

2021年8月20日(金)22時28分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)
タリバン幹部と中国の王毅外相

7月28日、タリバン幹部のバラダル氏と天津で会談した中国の王毅外相(右) Li Ran/Xinhua/REUTERS

アフガン人を中国では「金鉱の上に横たわる貧者」と称するが、タリバン勝利の前から中国がタリバンと経済協力を誓い合った狙いの一つにアフガンに眠る地下資源がある。これまでの動きと現状を考察してみよう。

アフガンに眠る地下資源の実態

中国の「商務部国際貿易経済合作(協力)研究院・中国駐アフガン大使館商務処・商務部対外投資経済合作司」は2020年、『対外投資合作国別(地区)指南 阿富汗(2020年版)』という調査報告書を発行した(以後、報告書)。商務部というのは中国の中央行政省庁の一つで、「阿富汗(アフハン)」は「アフガン」を指す。

アフガンには1兆ドルから3兆ドルにのぼる地下資源が埋蔵されたままになっていると言われ、報告書では「金鉱の上に横たわる貧者」という言葉でこの状況を表現している。

報告書によればアフガンには「鉄、クロム鉄鉱、銅、鉛、亜鉛、ニッケル、リチウム、ベリリウム、金、銀、プラチナ、パラジウム、タルク、大理石、バライト、宝石および半宝石、塩、石炭、ウラン、石油、天然ガス」などが開発されないまま眠っているそうで、その埋蔵量は現在わかっているものでは、おおむね以下のようになるとのこと。

図表1 アフガンに眠る地下資源の主要なデータ

endo20210820215301.jpg
『対外投資合作国別(地区)指南 阿富汗(2020版)』(中国商務部など発行)より

コンデンセートとは、天然ガスの採収の際に地表で凝縮分離する軽質液状炭化水素のことで、天然ガスコンデンセートとも呼ばれる(常温常圧で液体)。

まだ探査が進んでいないのか、ニッケル、リチウム、ベリリウム、パラジウム...などのレアメタルの埋蔵量に関しては書かれてないが、中国にとっては魅力的なものばかりだ。中国は世界的なレアメタルの生産地ではあるものの、最近では米中覇権における戦略的物質の一つとして益々需要が高まっている。

報告書には地下資源の分布図も掲載されている。

中国語で書かれているので、それを日本語に置き換えたものを以下に示す。

図表2:アフガニスタンに眠る地下資源の分布図

endo20210820215302.jpg
『対外投資合作国別(地区)指南 阿富汗(2020版)』(中国商務部など発行)より

図表2で「新しく入札した」と書かれているが、この「新しく」は、上記分布図が作成された時のことで、この分布図がどの時点のものかは報告書には書いていない。おそらく10年ほど前にアメリカが調査した結果を参照しているのではないかと推測される。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ガザの砂地から救助隊15人の遺体回収、国連がイスラ

ワールド

トランプ氏、北朝鮮の金総書記と「コミュニケーション

ビジネス

現代自、米ディーラーに値上げの可能性を通告 トラン

ビジネス

FRB当局者、金利巡り慎重姿勢 関税措置で物価上振
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 9
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中