最新記事

アフガニスタン

タリバン政権のテロ復活抑止に関する米中攻防――中露が「テロを許さない」と威嚇する皮肉

2021年8月18日(水)19時44分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

――中国は常に、アフガン問題を解決するには政治的解決が唯一の方法であると主張してきた。(中略) 中国は、アフガニスタンの円滑な移行を確保し、あらゆる種類のテロリストや犯罪行為を抑制し、アフガニスタンの人々が戦争や混乱から逃れてより良い祖国を再建できるよう期待している。(中略)過去20年間、ISIS、アルカイーダ、東トルキスタン・イスラム運動(EIM)などのテロ集団がアフガニスタンに集まり発展し、国際的・地域的な平和と安全に対する深刻な脅威となってきた。アフガニスタンを再びテロの巣窟にしてはならない。これは、アフガニスタンにおけるこれからの基本原則である。 アフガニスタンのタリバンが約束を守り、すべてのテロ組織との関係を完全に断ち切ることを願っている。 すべての国は、国際法と安全保障理事会の決議に従って義務を果たし、すべてのテロとの戦いに協力し、ISIS、アルカイーダ、東トルキスタン・イスラム運動などのテロ組織が機に乗じて活動を再開するのを断固として阻止すべきだ。

8月16日、王毅外相がブリンケン国務長官との電話会談で再強調

8月16日は目まぐるしく事態が動いていた。同日、アメリカのブリンケン国務長官が王毅外相に電話会談を申し込み、王毅が応じていたのだ。中国の外交部のウェブサイトによれば、ブリンケンと王毅の間には概ね以下のような会話がなされたという。テロ関係部分だけピックアップして記す。

ブリンケン:アフガニスタンに関するドーハ会合への中国の参加に感謝する。タリバンは過激派との決別を示し、秩序ある権力の移譲と包括的な政府を選ぶべきであり、そのためにも中国が重要な役割を果たすことを期待している。アメリカはアフガニスタンの将来はアフガニスタン国民が決定すべきであることを支持する。

王毅:歴史・文化・国情が大きく異なる国に、外国の政治体制モデルを適応させることが如何に難しいかが、事実によって改めて証明された。 政権は国民の支持なしには成り立たず、問題解決のために権力や軍事的手段を用いることは、問題をますます大きくするだけだ。この教訓を(アメリカは)真剣に反省しなければならない。中国は、アメリカとも意思疎通をしながら、アフガニスタンで新たな内戦や人道的災害が起こらないように、また、テロの温床や避難所にならないように働きかけていきたい。アメリカの前政権(トランプ政権)は「東トルキスタン・イスラム運動のテロ組織としての認定を解除する」と発表したが、これはテロ対策の問題に関してダブルスタンダードを取っており、非常に危険で間違っている。アメリカはその姿勢を改め、アフガニスタンや国際的なテロ対策協力に関する中米協力の障害を取り除くべきである。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

独サービスPMI1月改定値は52.5、6カ月ぶり高

ワールド

ユーロ圏総合PMI、1月改定50.2 3カ月ぶりに

ワールド

今後の利下げは物価次第、米政策の影響予測難しい=E

ビジネス

中国が米に対話呼びかけ、追加関税発動で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国経済ピークアウト
特集:中国経済ピークアウト
2025年2月11日号(2/ 4発売)

AIやEVは輝き、バブル崩壊と需要減が影を落とす。中国「14億経済」の現在地と未来図を読む

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「体が1日中だるい...」原因は食事にあり? エネルギー不足を補う「ある食品」で賢い選択を
  • 2
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」を予防するだけじゃない!?「リンゴ酢」のすごい健康効果
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    マイクロプラスチックが「脳の血流」を長期間にわた…
  • 5
    教職不人気で加速する「教員の学力低下」の深刻度
  • 6
    中国AI企業ディープシーク、米オープンAIのデータ『…
  • 7
    脳のパフォーマンスが「最高状態」になる室温とは?…
  • 8
    「靴下を履いて寝る」が実は正しい? 健康で快適な睡…
  • 9
    AIやEVが輝く一方で、バブルや不況の影が広がる.....…
  • 10
    DeepSeekが「本当に大事件」である3つの理由...中国…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」を予防するだけじゃない!?「リンゴ酢」のすごい健康効果
  • 4
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 5
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 6
    「靴下を履いて寝る」が実は正しい? 健康で快適な睡…
  • 7
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 8
    老化を防ぐ「食事パターン」とは?...長寿の腸内細菌…
  • 9
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 10
    「体が1日中だるい...」原因は食事にあり? エネルギ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 9
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 10
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中