最新記事

フィリピン

ロックダウン違反者を警備員が射殺 過剰暴力と批判高まるフィリピン

2021年8月15日(日)15時59分
大塚智彦

人権委は「コロナ規制違反者の脅威に対抗するためとして、警察官、警備員などが実力行使しやすい状況が生まれているが、こうした傾向は社会に肯定的効果を与えない」の見解を示している。

また「カラパタン」も「警察官でもない地方行政機関の警備員がなぜ銃で武装しているのか」との疑問も投げかけている。

フィリピン国家警察によるとコロナ規制違反関係ではこれまでに約2万人が逮捕されているという。行動違反、移動違反、必要書類不携帯などで市民が抵抗したり従わなかったケースが多いという。

フィリピンではデルタ変異株の猛威もあり、8月に入って感染者が166万人を超え、死者も約3万人と東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟10カ国中でインドネシアに次ぐ最悪の数字を更新し続けている。

このためドゥテルテ大統領は国民に対して「接種か刑務所行きか」などとして積極的なワクチン接種を呼びかけるとともに各種の感染防止対策の規制強化を実施している。

8月6日からは首都圏マニラとその周辺地域に最も厳格な「強化されたコミュニティ隔離措置(ECQ)」を実施。ECQはフィリピン政府、保健当局による「移動・経済制限措置」4段階の中で最も厳しい規制で、病院やスーパーマーケットなどの主要産業以外の営業自粛、短縮が求められ、市民は居住地区以外への移動制限がかけられ、夜間外出禁止令も出されている。飲食業はテイクアウト・デリバリーサービスのみに限定される。

警察官にボディカメラ装着へ

こうしたなか、フィリピン最高裁は8月までにフィリピン警察のすべての警察官に対してボディカメラの装着を義務付ける決定を下した。

これは警察官による違法行為や人権侵害から容疑者や一般市民を守るためで、多くの国民から歓迎されている。

現地からの報道などによると、最高裁の決定ではすべての警察官にボディカメラと記録機器を着用することが義務付けられ、不正使用や不正アクセス、装着拒否などは罪を問われる可能性があるという。最高裁ではボディカメラ導入で「捜査時の暴力や死者を未然に防止するとともに人権活動家からの訴えも減少することが期待できる」としている。

警察官など治安当局による不当逮捕や暴力、超法規的殺人などの人権侵害の抑制、阻止にどの程度効力を発揮するのかは未知数だが、国家警察は現在必要な法律や内部ルールの整備を進め、ボディカメラ導入に全面的に協力するとしており、今後の取り組みが注目されている。


otsuka-profile.jpg[執筆者]
大塚智彦(フリージャーナリスト)
1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中