自民党総裁選先行論強まる、五輪後の支持率低下 菅首相再任に不透明感

報道各社の世論調査で菅義偉内閣の支持率が昨年9月発足以来の最低を更新している。写真は7月30日、首相官邸で記者会見する菅首相。代表撮影(2021年 ロイター)
報道各社の世論調査で菅義偉内閣の支持率が昨年9月発足以来の最低を更新している。新型コロナの感染急拡大と政府対応への批判の高まりで、東京五輪開催や日本選手団の活躍は政権浮揚につながらなかった。与党内では選挙基盤の弱い中堅・若手を中心に衆院選前の総裁選実施を求める声が浮上。党幹部が同調する動きも出ている。総裁選の前に衆院解散に踏み切り、選挙結果を踏まえて続投という首相の戦略に不透明感が漂い始めている。
NHKが10日公表した世論調査によると、内閣支持率は29%と7月の33%から4ポイント下落した。9日の読売新聞では35%(同37%)、8日の朝日新聞は28%(同31%)とそれぞれ菅内閣発足以来、最低の水準となっている。
駒沢大学の山崎望教授(政治理論)は「政府は五輪の高揚感でコロナ不安の払しょくと支持率の浮揚を考えていたが、五輪期間中に感染爆発が起こっており、政府の中等症患者自宅待機方針で医療崩壊が現実化した。ワクチン不足も発生しており、支持率低下に意外感はない」と指摘する。
与党内でも支持率低下は大きな衝撃をもって受け止められている。自民党の中堅幹部は「衆院選は若手を中心に相当苦戦する可能性がある」と述べる。
二階・細田氏は菅続投支持を継続、任期満了選挙の観測も
菅首相の解散・再選戦略にも不透明感が強まりつつある。首相の党総裁としての任期は9月30日、衆院議員は10月21日に任期満了を迎える。首相は、9月5日の東京パラリンピック閉会直後の衆院解散・総選挙で勝利し、総裁選を無投票で乗り切る意向とみられ、これまで10月3、10、17日が投開票日の候補として取りざたされてきた。
政府・与党中枢では現時点もこれがメインシナリオで、二階俊博幹事長や細田派の細田博之会長は菅首相の続投支持を表明している。
しかし支持率低下局面での選挙はリスクが大きく、与党内では「10月の任期満了で衆院選を実施し、総裁選はその後行えばよい」(閣僚関係者)との意見も出てきた。秋が深まるほどワクチン接種が進み、感染動向が落ち着けば、支持率の好転が期待できるとの読みだ。同時に「選挙前に首相が交代しても、大敗すれば選挙後に再度総裁選を実施せざるを得ない」(自民党関係者)との計算もある。