最新記事

日本政治

自民党総裁選先行論強まる、五輪後の支持率低下 菅首相再任に不透明感

2021年8月12日(木)17時50分
菅義偉首相

報道各社の世論調査で菅義偉内閣の支持率が昨年9月発足以来の最低を更新している。写真は7月30日、首相官邸で記者会見する菅首相。代表撮影(2021年 ロイター)

報道各社の世論調査で菅義偉内閣の支持率が昨年9月発足以来の最低を更新している。新型コロナの感染急拡大と政府対応への批判の高まりで、東京五輪開催や日本選手団の活躍は政権浮揚につながらなかった。与党内では選挙基盤の弱い中堅・若手を中心に衆院選前の総裁選実施を求める声が浮上。党幹部が同調する動きも出ている。総裁選の前に衆院解散に踏み切り、選挙結果を踏まえて続投という首相の戦略に不透明感が漂い始めている。

NHKが10日公表した世論調査によると、内閣支持率は29%と7月の33%から4ポイント下落した。9日の読売新聞では35%(同37%)、8日の朝日新聞は28%(同31%)とそれぞれ菅内閣発足以来、最低の水準となっている。

駒沢大学の山崎望教授(政治理論)は「政府は五輪の高揚感でコロナ不安の払しょくと支持率の浮揚を考えていたが、五輪期間中に感染爆発が起こっており、政府の中等症患者自宅待機方針で医療崩壊が現実化した。ワクチン不足も発生しており、支持率低下に意外感はない」と指摘する。

与党内でも支持率低下は大きな衝撃をもって受け止められている。自民党の中堅幹部は「衆院選は若手を中心に相当苦戦する可能性がある」と述べる。

二階・細田氏は菅続投支持を継続、任期満了選挙の観測も

菅首相の解散・再選戦略にも不透明感が強まりつつある。首相の党総裁としての任期は9月30日、衆院議員は10月21日に任期満了を迎える。首相は、9月5日の東京パラリンピック閉会直後の衆院解散・総選挙で勝利し、総裁選を無投票で乗り切る意向とみられ、これまで10月3、10、17日が投開票日の候補として取りざたされてきた。

政府・与党中枢では現時点もこれがメインシナリオで、二階俊博幹事長や細田派の細田博之会長は菅首相の続投支持を表明している。

しかし支持率低下局面での選挙はリスクが大きく、与党内では「10月の任期満了で衆院選を実施し、総裁選はその後行えばよい」(閣僚関係者)との意見も出てきた。秋が深まるほどワクチン接種が進み、感染動向が落ち着けば、支持率の好転が期待できるとの読みだ。同時に「選挙前に首相が交代しても、大敗すれば選挙後に再度総裁選を実施せざるを得ない」(自民党関係者)との計算もある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

テスラ車販売、3月も欧州主要国で振るわず 第1四半

ビジネス

トランプ氏側近、大半の輸入品に20%程度の関税案 

ビジネス

ECB、インフレ予想通りなら4月に利下げを=フィン

ワールド

米、中国・香港高官に制裁 「国境越えた弾圧」に関与
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 8
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 9
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 6
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中