入管が医療受けさせず女性死亡、遺族「上川法相が責任を取るべき」
ウィシュマさんの遺族らは法務大臣の責任にも言及 (筆者撮影)
<親日家だったスリランカ人女性ウィシュマさんが名古屋入管で死亡した事件の最終報告書は、まだすべてを語っていない>
激しい嘔吐と吐血を繰り返し、体重が20キロも激減するなど、著しく健康状態が悪化したスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさん(当時33歳)を入院させることなく、今年3月に死なせてしまった名古屋出入国在留管理局(名古屋入管)。8月10日、法務省及び出入国在留管理庁(入管庁)は、ウィシュマさんの事件についての最終報告と、名古屋入管の局長などの処分を発表した。
しかし最終報告も、ウィシュマさんを死なせてしまったことへの追及が甘い上、人が一人死んだ事件にしては処分もあまりに軽く、しかも対象は名古屋入管の局長らだけで入管庁本庁や上川陽子法務大臣自身が具体的に責任を問われるものではなかった。来日中の遺族は「上川法相自身が責任を取るべきではないか」と訴えた。
トカゲのしっぽ切り
ウィシュマさんは昨年8月に名古屋入管に収容された。今年1月半ば頃から吐き気を催し食事を取ることができない等の健康状態の悪化を訴えるようになった。名古屋入管側は、非常勤医師による診察や外部の病院での検査などは行ったものの、ウィシュマさんの健康状態が悪化し続けても、彼女が幾度も求めていた治療のための仮放免(一時的に身柄を解放すること)や入院を許可せず、点滴などの治療も外部病院では行なわせなかった。
これについて、最終報告では名古屋入管内での情報共有や医療体制に不備があったことなどを認めているものの、仮放免を許可しなかったことを「不当とは言えない」と事実上、正当化した。また、最終報告を受けての処分も、名古屋入管の佐野豪俊局長と当時の渡辺伸一次長を訓告、幹部2人を厳重注意とするというもので、7段階ある公務員の処分の中で、それぞれ軽い方から3番目と2番めと、人が一人亡くなった事件に対し、あまりにも軽いものだった。しかも、入管庁の本庁や法務省では誰も処分されていない。
上川法相は責任をとって
処分が名古屋入管に対してのみにとどまったことに、真相究明のため来日しているウィシュマさんの遺族も違和感を感じているようだ。ウィシュマさんの妹であるワヨミさんは「これは名古屋入管だけでなく法務省の問題です」と語り、同じく妹であるポールニマさんも「上川法相が私達と面会した時、法相は『ちゃんと責任を取ります』と言いました。今回の報告書では(今年4月発表の中間報告に)嘘も書いてあったことが判明して、責任を取らないといけないのに、(上川法相は)責任逃れしているようにしか見えません」と語った。「名古屋入管だけではなく、法務省の関係者にどのような処分が行なわれるのか、期待して待っています」(同)。