池内恵、細谷雄一、待鳥聡史が語り合った「山崎正和論」〈1周忌〉
■池内 私は残ると思いますよ。残るのだけど、まさに細谷さんがおっしゃる「敵意や憎しみの対象」になりかねないというのはあると思います。
たとえばツイッターなどSNSのような空間で、不用意に山崎先生の話をすると、全然想像もしないところから足を引っかけられたり、石を投げられたりするかもしれない。SNSは確かに便利ですし、それも「社交」かもしれませんが、ある種の全然違うタイプの社交空間であり、山崎先生はそこには合わないということです。
でも、SNSにはないものが何であるかということが逆にわかってくるのではないでしょうか。
先生が人生を締めくくる形で晩年、『舞台をまわす、舞台がまわる』(中央公論新社、2017年)というオーラルヒストリーの本を出されましたが、山崎先生がされたような、まさに「舞台回し」ですね。舞台の上、その中で踊る空間が必要だということを、今の新しいメディア環境の中でみんなが再認識して、また新たにつくっていくことになるのだと思います。
『別冊アステイオン それぞれの山崎正和』
公益財団法人サントリー文化財団
アステイオン編集委員会 編
CCCメディアハウス
(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)
池内 恵(Satoshi Ikeuchi)
1973年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得退学。国際日本文化研究センター准教授、アレクサンドリア大学(エジプト)客員教授などを経て、東京大学先端科学技術研究センター教授。専門はアラブ研究。著書に、『イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社、サントリー学芸賞)、『[中東大混迷を解く]サイクス= ピコ協定 百年の呪縛』『[中東大混迷を解く]シーア派とスンニ派』(ともに新潮社)、『新しい地政学』(共著、東洋経済新報社)など多数。
細谷雄一(Yuichi Hosoya)
1971年生まれ。慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程修了。博士(法学)。アジア・パシフィック・イニシアティブ研究主幹。専門は国際政治学・外交史。北海道大学法学部専任講師、敬愛大学国際学部専任講師を経て、慶應義塾大学法学部教授。著書に『戦後国際秩序とイギリス外交』(創文社、サントリー学芸賞)、『倫理的な戦争』(慶應義塾大学出版会)、『戦後史の解放(I・II)』(新潮社)、『新しい地政学』(編著、東洋経済新報社)など多数。
待鳥聡史(Satoshi Machidori)
1971年生まれ。京都大学大学院法学研究科博士課程退学。博士(法学)。大阪大学大学院法学研究科助教授、京都大学大学院法学研究科助教授を経て、京都大学大学院法学研究科教授。専門は比較政治・アメリカ政治。著書に『財政再建と民主主義』(有斐閣)、『首相政治の制度分析』(千倉書房、サントリー学芸賞)、『政治改革再考』(新潮社)など多数。