米軍のアフガン撤退は中国との競争に集中するため? 判断は本当に正しいか
Biden’s Plan Doesn’t Add Up
アフガニスタン国陸軍215軍団の兵士 US MARINES-REUTERS
<「米軍は撤収するがタリバン復活はない」というバイデンの主張が、どうにも信頼できない理由>
約20年にわたりアフガニスタンで続いてきた戦争(アメリカ史上最長の戦争だ)が、予想以上に突然かつ急速に終焉を迎えようとしている。
4月にアフガニスタン駐留米軍の撤収を宣言したジョー・バイデン米大統領は7月8日、予定よりも早い8月31日までの撤収完了を発表した。だが、この決定に賛成であれ反対であれ、誰もが懸念すべき問題がいくつかある。
第1に、長年にわたり通訳として米軍に協力してきた多くのアフガニスタン人はどうなるのか。もし、反政府勢力タリバンが再び権力を握れば、彼らはほぼ確実に捕らわれるか、殺されるだろう。
米国防総省は、通訳たちを出国させる計画を策定中だというが、どのくらいの範囲(通訳としての協力期間や家族など)になるかは不透明だ。しかも、タリバンは首都カブールにつながる陸路の多くを支配下に置いているし、空路の頼みであるバグラム空軍基地は、既に米軍が撤収してしまっている。
第2に、アメリカは今後、アフガニスタンをどうやって守っていくつもりなのか。バイデンは4月、アメリカは今後もアフガニスタンをテロリストの支配から守ると約束した。だが、駐留米軍がいなくなったら、その約束をどうやって守るというのか。
バイデンは、「テロリストの再台頭を、地平線の向こうから阻止する」と語った。つまり、センサーや衛星を駆使して、遠くからでもタリバンをはじめとするテロ組織を監視し、必要であれば、近隣の米軍基地から戦闘機やミサイルや無人機(ドローン)を送り込むというのだ。
米軍撤収を決めた本当の理由
だが、アフガニスタンに最も近い「近隣の」基地は、1700キロ以上離れたカタールやアラブ首長国連邦にある。このため、「地平線の向こうから」アフガニスタンを防衛する戦略は、あまり有効ではないし、非常に高くつく。
例えば、こうした基地に配備する戦闘機や空中給油機、ジェット燃料、ミサイル、そしてドローンを増やさなくてはならない。パイロットや整備士や情報スペシャリストなどの人員も必要だろう。この地域にもう1隻空母を配備する必要もあるかもしれない。
こうした態勢を整えるために必要な投資は、バイデンのアフガニスタン撤収計画の最も不可解な部分だ。そもそも駐留米軍を撤収させる本当の理由は、アメリカの安全保障で、アフガニスタンの優先順位が大きく下がったからだ。