熱波のバンクーバー、浜辺でムール貝が焼き上がる
熱波で10億の磯の生物が焼け死んだ模様...... YouTube
<海岸の岩は50℃に達し、天然のバーベキュー場となった>
記録的な熱波に見舞われたカナダのブリティッシュ・コロンビア州(以下「B.C.州」)で、またしても異常な現象が報告された。6月末から7月初めにかけての高気温で海水の温度が上昇し、浜辺の貝が半ば加熱調理されたような状態となって大量に死んでいたことがわかった。
この問題を調査しているブリティッシュ・コロンビア大学のクリス・ハーレー海洋生態学教授は、バンクーバーが位置するセイリッシュ海沿岸において、6月末だけで10億匹以上の浜辺の生物が死んだ可能性があるとみている。
ムール貝のほか、フジツボやヤドカリ、ヒトデなどに被害が及んでいる。海岸の北側の領域では大量のフジツボを中心とした死亡例が報告されており、反対に米国境に近い南側の沿岸では、アサリを中心に熱波と高温で干からびた例が顕著だ。
カナダのナショナル・オブザーバー誌は「B.C.の熱波で10億の磯の生物が焼け死んだ模様」と報じた。米ワシントン・ポスト紙もこの問題について、「北西部とカナダ襲う過酷な熱波で無数の貝類が生きたまま料理される」と報じている。
B.C.州ではヒートドーム現象による被害が深刻で、同国の観測史上最高となる49.5℃の気温を記録したほか、一時は170件を超える森林火災が同時進行し、山間部のある町では9割が焼失する事態となった。
干潮で取り残され、高温に耐えられず
磯部で自然に調理された状態となったムール貝だが、残念ながら多くは腐敗が進行しており、とても食べられる状態ではないようだ。教授はナショナル・オブザーバー誌に対し、発見時はこれらの貝類などが「加熱されて死亡」しており、「その熱気と悪臭は衝撃的だった」と振り返る。
セイリッシュ海沿岸の気候はふだんならば穏やかだが、6月末には熱波の影響で気温が40℃ほどにまで上昇した。現在は沿岸の複数のビーチで、死んだ貝類などによる腐敗臭が充満しているという。もしも貝類が海中に留まることができていたなら、高気温と直射日光の影響は緩和されただろう。しかし、一部は浜辺に取り残されてしまい、こうした海洋生物のあいだで被害が広がった。
不運にも熱波が最も深刻だった日には、干潮で潮が引くタイミングと気温上昇の時間帯が重なった。ヒトデやムール貝などが砂利の目立つ浜辺や磯の岩場などに取り残され、およそ6時間にわたり高温にさらされたことになる。こうした貝類は透明感を失い、まるで火を通したかのように白変した状態となった。
今回の熱波が去ったあとも、生態系へのダメージは数年単位で尾を引く可能性がある。10億匹以上という大量の海洋生物がわずか数週間で失われたことになるが、個体数はすぐに回復するわけではない。ハーレー教授は、ムール貝やフジツボなどは比較的成長が早いものの、それでも回復に2〜3年を要すると見積もる。