最新記事

大量のレース鳩がこつぜんと消えたミステリー

2021年7月12日(月)11時10分
松丸さとみ
鳩

放された1万羽の鳩がほとんど戻ってこなかった  REUTERS/Phil Noble

<英国イングランドの中東部に位置するピーターバラで行われた鳩のレースで、放された1万羽の鳩がほとんど戻ってこなかった......>

英全土で1日のうちに25万羽の鳩が行方不明に

6月のある晴れた土曜日、英国イングランドの中東部に位置するピーターバラで行われた鳩のレースで、奇妙なことが起きた。3時間程度で終了すると思われたレースで、放された1万羽の鳩がほとんど戻ってこなかったのだ。

鳩レースは、レース会場で一斉に鳩を放ち、鳩の巣であるそれぞれの鳩舎までの距離と、戻ってきた時間をもとに速さを算出してスピードを競う。レースで使われるのは通常のドバトではなく、英語でhoming pigeonと呼ばれる、高い帰巣本能を有する伝書バトだ(homingは鳥の帰巣本能を意味する)。

しかし不思議なことに、前述のピーターバラでのレースのみならず、6月19日に開催された鳩レースで放された鳩はほとんどが戻ってこなかった。英テレビ局itvニュースによると、この日は全英で約50件のレースが行われ、25万羽の鳩が放されたが、6月29日の時点で戻っていたのはわずかだという。

中には、ピーターバラのレースに出た鳩が、オランダやスペインのマヨルカ島で見つかったケースもあった(レース鳩は個体を特定するための脚環が付けられている)。また英国に限らず、ポルトガルやベルギーで同日に開催された鳩レースでも、同様の影響を受けた大会があった模様だ。

地球の磁場の乱れが原因か

同じ日、イングランド南西部スウィンドンで開催された鳩レースに参加したディーン・シンプソンさんはitvニュースに対し、このレースでは1400羽が放されたが、200~300羽しか戻らなかったと話した。おかしいと思ったシンプソンさんはソーシャルメディアを確認してみると、ピーターバラでのレースを始め、英国中で同様のことが起きていることに気付いたという。

シンプソンさんによると、レース鳩は地球の磁場を使って進路を決める。しかし太陽嵐などが起きると磁場が乱れるため、レース鳩の方向感覚が狂ってしまうのだという。

シンプソンさんはレース当日の天気について、視界も良く、青空が広がっていたと振り返る。とはいえ、「空には野鳥がほとんどおらず、何か変だった」とも加えた。「目には見えない何かが起きていたんだと思う。鳥の方向感覚を乱し、進路が劇的に変わってしまうような何かが」と説明した。シンプソンさんはまた、複数の小型竜巻が原因である可能性もあるとの考えを示した。

愛鳩家のリチャード・セイヤーズさんは英テレグラフ紙に対し、この日は「史上最悪のレース日の1つだった」と述べ、自分の村だけでも300羽が消えたと話した。セイヤーズさんは、もし迷っているレース鳩を見つけたら、餌や水をあげて休ませてあげてほしい、と呼びかけている。8割の確率で、数日中には自分の巣に向けて出発するだろうとしている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

FRB、一段の利下げ必要 ペースは緩やかに=シカゴ

ワールド

ゲーツ元議員、司法長官の指名辞退 売春疑惑で適性に

ワールド

ロシア、中距離弾でウクライナ攻撃 西側供与の長距離

ビジネス

FRBのQT継続に問題なし、準備預金残高なお「潤沢
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中