大量のレース鳩がこつぜんと消えたミステリー
放された1万羽の鳩がほとんど戻ってこなかった REUTERS/Phil Noble
<英国イングランドの中東部に位置するピーターバラで行われた鳩のレースで、放された1万羽の鳩がほとんど戻ってこなかった......>
英全土で1日のうちに25万羽の鳩が行方不明に
6月のある晴れた土曜日、英国イングランドの中東部に位置するピーターバラで行われた鳩のレースで、奇妙なことが起きた。3時間程度で終了すると思われたレースで、放された1万羽の鳩がほとんど戻ってこなかったのだ。
鳩レースは、レース会場で一斉に鳩を放ち、鳩の巣であるそれぞれの鳩舎までの距離と、戻ってきた時間をもとに速さを算出してスピードを競う。レースで使われるのは通常のドバトではなく、英語でhoming pigeonと呼ばれる、高い帰巣本能を有する伝書バトだ(homingは鳥の帰巣本能を意味する)。
しかし不思議なことに、前述のピーターバラでのレースのみならず、6月19日に開催された鳩レースで放された鳩はほとんどが戻ってこなかった。英テレビ局itvニュースによると、この日は全英で約50件のレースが行われ、25万羽の鳩が放されたが、6月29日の時点で戻っていたのはわずかだという。
中には、ピーターバラのレースに出た鳩が、オランダやスペインのマヨルカ島で見つかったケースもあった(レース鳩は個体を特定するための脚環が付けられている)。また英国に限らず、ポルトガルやベルギーで同日に開催された鳩レースでも、同様の影響を受けた大会があった模様だ。
地球の磁場の乱れが原因か
同じ日、イングランド南西部スウィンドンで開催された鳩レースに参加したディーン・シンプソンさんはitvニュースに対し、このレースでは1400羽が放されたが、200~300羽しか戻らなかったと話した。おかしいと思ったシンプソンさんはソーシャルメディアを確認してみると、ピーターバラでのレースを始め、英国中で同様のことが起きていることに気付いたという。
シンプソンさんによると、レース鳩は地球の磁場を使って進路を決める。しかし太陽嵐などが起きると磁場が乱れるため、レース鳩の方向感覚が狂ってしまうのだという。
シンプソンさんはレース当日の天気について、視界も良く、青空が広がっていたと振り返る。とはいえ、「空には野鳥がほとんどおらず、何か変だった」とも加えた。「目には見えない何かが起きていたんだと思う。鳥の方向感覚を乱し、進路が劇的に変わってしまうような何かが」と説明した。シンプソンさんはまた、複数の小型竜巻が原因である可能性もあるとの考えを示した。
愛鳩家のリチャード・セイヤーズさんは英テレグラフ紙に対し、この日は「史上最悪のレース日の1つだった」と述べ、自分の村だけでも300羽が消えたと話した。セイヤーズさんは、もし迷っているレース鳩を見つけたら、餌や水をあげて休ませてあげてほしい、と呼びかけている。8割の確率で、数日中には自分の巣に向けて出発するだろうとしている。