最新記事

対テロ戦争

米軍の撤退と共に壊走するアフガン軍部隊 支配地域広げるタリバン

Over 1,000 Afghan Troops Flee Taliban As U.S. Embarks on Final Withdrawal Stage

2021年7月6日(火)16時45分
エリザベス・クリスプ
アフガニスタン軍部隊

アフガニスタン軍幹部は国は自分たちで守れると自信を語るが(写真は7月4日、フェイザーバードの治安強化のため招集された特別部隊) Afghanistan Ministry of Defence//REUTERS

<米軍の撤退に伴い、イスラム原理主義勢力タリバンが勢力伸張。アメリカ史上最長20年間の戦争は何だったのか>

アフガ二スタン治安維持部隊の隊員1000人以上が7月4日、国境を越えてタジキスタンへの撤退を余儀なくされたと報じられた。アフガニスタン北部で勢力を拡大しているタリバンの武装集団に圧倒されたかたちだ。

こうした緊張の激化は、アメリカ軍がアフガニスタンからの撤退を進める中で起きたものだ。アメリカはこれまで、2001年9月11日に起きた同時多発テロ以降、20年近くにわたって同国で戦闘を行ってきた。

「タリバンがすべての道路を封鎖したため、これらの隊員は、国境を越える以外に行き場をなくしていた」と7月5日、アフガニスタン政府のある高官はロイター通信に対して語った。

アメリカ軍は7月2日、同軍にとってアフガニスタン最大の航空拠点だったバグラム空軍基地からの撤退を完了した。これは、すべての外国部隊の撤収完了に向けた動きの1つだ。北大西洋条約機構(NATO)もすでに部隊の引き上げを始めており、アメリカがアフガニスタンから完全撤退する前に、撤収プロセスを完了する見込みだ。

ただしアメリカ軍は、今後も約650人の兵士がアフガニスタンにとどまり、首都カブールにあるアメリカ大使館の警護や、カブール国際空港の警備支援などの任務を担う。

24時間で9地区がタリバンに奪われる

アフガニスタンの地元メディア、TOLOニュースは7月4日、同国の9つの地区がわずか24時間のうちにタリバンの手に落ちたと報じた。

アフガニスタン軍特殊作戦部隊の司令官を務めるヒバトゥラ・アリザイ少将はTOLOの取材に対し、「これまでの24時間に我々は、ラグマーン州、カーピーサ州ニジラブ郡、パルヴァーン州シーンワーリー郡、ガズニー州で作戦を遂行し、敵勢力に人的被害を与えた」と語った。

最近になって武力衝突が相次ぎ、後退を余儀なくされている状況においても、ロイターの報道によれば、アフガニスタンのアシュラフ・ガニ大統領は、自国の治安部隊が紛争に対処する能力を十分に備えているとの主張を変えていない。

アメリカのジョー・バイデン大統領は、2001年に発生したアメリカ同時多発テロから20年にあたる9月11日までに、アフガニスタンからアメリカ軍を撤退させるという目標を掲げている。

バイデンは6月25日、「我が国の軍隊は撤退するものの、アフガニスタンへの支援が終わるわけではない」と発言した。ホワイトハウスで行われた、ガニ大統領との会談を前にした談話だ。

アメリカ史上最長の戦いとなっているアフガニスタンでの戦闘に関して、バイデンはかねてから撤退を主張してきた。この戦闘は、アメリカ同時多発テロの黒幕とされたウサマ・ビンラディンをはじめとする国際テロ組織アルカイダの主要メンバーの行方を追う中で始まったものだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

2月完全失業率は2.4%に改善、有効求人倍率1.2

ワールド

豪3月住宅価格は過去最高、4年ぶり利下げ受け=コア

ビジネス

アーム設計のデータセンター用CPU、年末にシェア5

ビジネス

米ブラックロックCEO、保護主義台頭に警鐘 「二極
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 9
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中