最新記事

中国共産党

中国共産党100周年式典は、習近平ただ1人を礼讃するイベントと化した

CCP Now All About Xi

2021年7月5日(月)16時30分
メリンダ・リウ(本誌北京支局長)
祝賀文芸公演

オリンピック・スタジアムで行われた祝賀文芸公演(6月28日) THOMAS PETER-REUTERS

<共産党の未来は、習近平の未来。後継者指名を先送りにして強権支配を続ける習の前途に、毛沢東の教訓がちらつく>

世界有数の厳重飛行制限空域である北京の大通りの上空に現れたいくつものヘリ──中国共産党の結党100周年記念式典の最終リハーサルが始まったのは、本番の2週間前だった。

「100」の字を組んで編隊飛行するヘリが、私の自宅の窓の向こうを飛び過ぎていく。青・黄・赤のスモークをたなびかせたジェット機がその後を追い、けたたましい音を立てて天安門広場へ向かった。

100周年記念式典に際して軍事パレードは行わないという事前の発表どおり、パレードの予行演習はなかった。軍が行進する際は通常、近隣住民は窓とカーテンを閉めて外を見ないよう指示される。

ただ、共産党がテクノロジーに精通していることを考えれば、一連の行事に現実のパレードは必要なかった。6月28日、北京の国家体育場(オリンピック・スタジアム)で観衆約2万2000人を迎えて行われた「祝賀文芸公演」では、デジタル視覚効果やドローン(無人機)撮影を駆使。宇宙探査、潜水艦、2008年の北京五輪のハイライト、新型コロナウイルスと闘う医師たちなど、中国が収めた勝利がステージ上とスクリーンに再現された。

こうしたイメージの大半は既におなじみのものだ。だが、100回目の誕生日はいつもと同じではなかった。今回、焦点として強調されていたのは過去ではなく未来。それも中国と共産党だけでなく、党総書記で国家主席である習近平(シー・チンピン)の未来だ。

実際、100周年式典は間違いなく「集団行事」ではなかった。中国の一般市民は毛沢東時代以来数十年ぶりに、突き詰めればただ1人の人物をテーマとする祝賀イベントを目にした。

中国の命運が習という個人に託される。そんな構図が現れたのは毛沢東が1976年に死去して以来、初めてのことだ。同時に、これは今回の共産党のパーティーが、単なるお祝いのための数日間でなかったことを意味している。

100周年記念式典が天安門広場で行われた7月1日は、共産党の公式な設立記念日だ。この日は、毛以降の指導者らが従ってきた「集団指導体制」と自主的な権力抑制システムの根絶を目指す習の取り組みが、新たな段階に入った記念日としても記憶されることになるだろう。

共産党機関紙、人民日報傘下のタブロイド紙である環球時報は同日、「偉大征程(偉大な道のり)」と題された祝賀文芸公演を特集。熱烈な党支持者を従えた習の写真が1面に掲載され、「美徳と魂が次の100年へと国家を牽引する」との見出しが躍った。

習というイデオロギー

共産党は党員9500万人強で、全人口の約6.6%相当にすぎない。さらにフィナンシャル・タイムズ紙によれば、2018年の入党者210万人のうち、地方出身の出稼ぎ労働者(中国の生産年齢人口の3分の1を占める)は5700人だけ。党はテクノクラートやビジネスエリートの集いと化している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トランプ氏側近、大半の輸入品に20%程度の関税案 

ビジネス

ECB、インフレ予想通りなら4月に利下げを=フィン

ワールド

米、中国・香港高官に制裁 「国境越えた弾圧」に関与

ビジネス

英インフレ期待上昇を懸念、現時点では安定=グリーン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 5
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 8
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 9
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 6
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中