中国共産党100周年式典は、習近平ただ1人を礼讃するイベントと化した
CCP Now All About Xi
オリンピック・スタジアムで行われた祝賀文芸公演(6月28日) THOMAS PETER-REUTERS
<共産党の未来は、習近平の未来。後継者指名を先送りにして強権支配を続ける習の前途に、毛沢東の教訓がちらつく>
世界有数の厳重飛行制限空域である北京の大通りの上空に現れたいくつものヘリ──中国共産党の結党100周年記念式典の最終リハーサルが始まったのは、本番の2週間前だった。
「100」の字を組んで編隊飛行するヘリが、私の自宅の窓の向こうを飛び過ぎていく。青・黄・赤のスモークをたなびかせたジェット機がその後を追い、けたたましい音を立てて天安門広場へ向かった。
100周年記念式典に際して軍事パレードは行わないという事前の発表どおり、パレードの予行演習はなかった。軍が行進する際は通常、近隣住民は窓とカーテンを閉めて外を見ないよう指示される。
ただ、共産党がテクノロジーに精通していることを考えれば、一連の行事に現実のパレードは必要なかった。6月28日、北京の国家体育場(オリンピック・スタジアム)で観衆約2万2000人を迎えて行われた「祝賀文芸公演」では、デジタル視覚効果やドローン(無人機)撮影を駆使。宇宙探査、潜水艦、2008年の北京五輪のハイライト、新型コロナウイルスと闘う医師たちなど、中国が収めた勝利がステージ上とスクリーンに再現された。
こうしたイメージの大半は既におなじみのものだ。だが、100回目の誕生日はいつもと同じではなかった。今回、焦点として強調されていたのは過去ではなく未来。それも中国と共産党だけでなく、党総書記で国家主席である習近平(シー・チンピン)の未来だ。
実際、100周年式典は間違いなく「集団行事」ではなかった。中国の一般市民は毛沢東時代以来数十年ぶりに、突き詰めればただ1人の人物をテーマとする祝賀イベントを目にした。
中国の命運が習という個人に託される。そんな構図が現れたのは毛沢東が1976年に死去して以来、初めてのことだ。同時に、これは今回の共産党のパーティーが、単なるお祝いのための数日間でなかったことを意味している。
100周年記念式典が天安門広場で行われた7月1日は、共産党の公式な設立記念日だ。この日は、毛以降の指導者らが従ってきた「集団指導体制」と自主的な権力抑制システムの根絶を目指す習の取り組みが、新たな段階に入った記念日としても記憶されることになるだろう。
共産党機関紙、人民日報傘下のタブロイド紙である環球時報は同日、「偉大征程(偉大な道のり)」と題された祝賀文芸公演を特集。熱烈な党支持者を従えた習の写真が1面に掲載され、「美徳と魂が次の100年へと国家を牽引する」との見出しが躍った。
習というイデオロギー
共産党は党員9500万人強で、全人口の約6.6%相当にすぎない。さらにフィナンシャル・タイムズ紙によれば、2018年の入党者210万人のうち、地方出身の出稼ぎ労働者(中国の生産年齢人口の3分の1を占める)は5700人だけ。党はテクノクラートやビジネスエリートの集いと化している。