最新記事

自律型殺人兵器

ドローンが「知性」を持ち始めた。止めるなら今だ

Killer Flying Robots Are Here. What Do We Do Now?

2021年7月6日(火)19時22分
ビベック・ワドワー(ハーバード大学ロースクール研究院)、アレックス・ソークエバー(フォーリン・ポリシー誌ライター)
無人戦闘航空機「X-47B」

無人攻撃機はもはや常識。もしそれが「知性」をもったら?(写真は米海軍の無人戦闘航空機「X-47B」) U.S. NAVY via flickr

<顔認識機能とAIを搭載したトルコのドローン「Kargu-2」は、標的を自ら発見して追跡・殺害することに成功した可能性がある>

映画『ターミネーター』シリーズでは、アーノルド・シュワルツェネッガー演じるスーパーロボットが、人間の標的を追い回して殺そうとする。1980年代の公開当時、これは現実にはあり得ないSFの世界の話だった。

だが今や殺人ロボットによる標的の追跡は現実になり、さらにはこうしたロボットが売買されて戦場に配備されている。ただし殺人ロボットといっても、映画に出てくるようなサイボーグではない。自律型の殺人ドローンだ。

トルコが新たに開発したクワッドコプター型ドローン「Kargu-2」は、顔認識機能とAI(人工知能)を使って人間の標的を自ら発見して追跡し、殺害することができるとみられている。これが本当なら、人間による遠隔操作が必要なドローンから大きな技術的飛躍を果たしたことになる。

■AIを使って初めて自律的に人を殺すことに成功したと言われれるKargu-2


国連安全保障理事会は3月に発表した報告書の中で、2020年3月のリビアでの戦闘でKargu-2が人間の標的を追跡して攻撃したと指摘した。報告書によれば、Kargu-2は撤退していく後方支援部隊や軍用車両を追跡し、「操縦者とのデータ接続を必要とせずに攻撃を行った」可能性があるという。

以前よりも入手しやすくなり、機能も急速に向上しているドローンは、人類全体に幾つもの差し迫った課題を突きつけている。

戦闘能力に新たな「非対称」をもたらす

国際社会がその開発や売買の中止に合意しなければ、ならず者国家から小規模な犯罪組織、さらにはサイコパス的な単独犯に至るまで、誰でもKargu-2のような自律型殺人ドローンを入手し、使えるようになる日も近いだろう。殺人ドローンが大量に出回れば、技術的に進んでいる国々が開発した対テロ防衛技術が意味をなさなくなる。

それに戦争に新たな力の不均衡を生み出すことで、自律型殺人ドローンが、数多くの地域の平和を不必要に乱すことになりかねない。手頃な価格のドローンが広まりつつあることで、安定している地域を簡単に戦闘地域へと一変させることができるようになるのだ。

殺人ドローンの誕生と急速な広まりはしかし、何ら驚くことではない。何十年も前から、軍による最新技術の導入を上回るペースで消費者技術の開発が進められてきた。ドローンは基本的に「回転翼のついたスマートフォン」であり、現在入手可能な消費者向けドローンは、スマートフォン技術の急速な発展の副産物だと言える。消費者向けドローンは3次元へのアクセスを可能にし、食料品や医薬品の配達など新たな商業機会を生み出している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ミャンマー地震の死者1000人超に、タイの崩壊ビル

ビジネス

中国・EUの通商トップが会談、公平な競争条件を協議

ワールド

焦点:大混乱に陥る米国の漁業、トランプ政権が割当量

ワールド

トランプ氏、相互関税巡り交渉用意 医薬品への関税も
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジェールからも追放される中国人
  • 3
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中国・河南省で見つかった「異常な」埋葬文化
  • 4
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 5
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 6
    なぜANAは、手荷物カウンターの待ち時間を最大50分か…
  • 7
    不屈のウクライナ、失ったクルスクの代わりにベルゴ…
  • 8
    アルコール依存症を克服して「人生がカラフルなこと…
  • 9
    最古の記録が大幅更新? アルファベットの起源に驚…
  • 10
    最悪失明...目の健康を脅かす「2型糖尿病」が若い世…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えない「よい炭水化物」とは?
  • 4
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 5
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 7
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 8
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 9
    大谷登場でざわつく報道陣...山本由伸の会見で大谷翔…
  • 10
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中