南シナ海判決から5年 止まらない中国の海洋進出
2020年7月の世論調査によれば、フィリピン国民の70%は、政府が南シナ海における領有権を強く主張することを望んでいる。
フィリピンのロクシン外相は先月の声明で、「我が国の領有権を損なうような、それどころか法律、歴史、我々の集団的記憶から消し去ろうとするような試みは断固として拒否する」と述べた。
2016年以来、フィリピンは係争の対象となっている海域での中国の活動に対して128回にわたり外交ルートを通じた抗議を行っている。また沿岸警備隊及び水産庁の船舶がフィリピンEEZ内で「主権維持を目的とした」哨戒を行っている。
ただ、ドゥテルテ大統領のもとで、フィリピンは領有権主張の動きを外交的な抗議以外にはほとんど見せていない。煽動的なドゥテルテ氏ではあるが、対中関係を外交政策の要としており、圧倒的に規模の大きな隣国に挑戦するのは「無益」であると述べている。
今年初めには一部の閣僚が領有権問題をめぐる発言をヒートアップさせたため、ドゥテルテ大統領は閣僚によるそうした発言を禁止している。
「中国の主導権は強まっている。ドゥテルテ政権が言えるのは、中国側が大きな事件を起こしていない、ということだけだ」と前出のポーリング氏。「いじめっ子に屈服ばかりしていれば、もちろん喧嘩は起きない」
フィリピン沿岸警備隊と国防省にコメントを求めたが、回答は得られなかった。
周辺各国で懸念呼ぶ
南シナ海の他の海域でも中国の存在感は増している。防備を固めた港湾や滑走路、地対空ミサイルを備えた人工島の強化も進行している。
ベトナムとの対立はエネルギー開発プロジェクトの後退に繋がった。マレーシアは中国船舶の活動に抗議している。また中国船舶の出没は、厳密には領有権争いの当事国ではないインドネシアでも懸念を呼んでいる。
米海軍は時折「航行の自由」作戦を実施することで中国による領有権主張をけん制しているが、中国によるフィリピンその他の周辺海域への艦艇展開をやめさせる効果は出ていない。
ドゥテルテ氏は2016年に大統領に選出される前、南シナ海におけるフィリピンの領有権主張を守り抜くと述べていた。
ドゥテルテ氏は来年末には1期6年の任期を終えて退任する予定だが、副大統領への就任や娘が後継となる可能性も噂され、政策は変化しないのではないかとの疑念も生まれている。
冒頭のメグさんらパンガシナン州の漁業者らは、今や彼らの動きを左右するようになった中国艦艇に歯向かうという望みはほとんど持っていない。
漁業者のクリストファー・デベラさん(51)は、「今ではまるで、自分たちの裏庭で盗みを働いているような気分だ」と語る。
Karen Lema(翻訳:エァクレーレン)
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