最新記事

中国

中山服をトップのみが着るのは中国政治の基本:建党100周年大会の構成と習近平演説を解剖

2021年7月3日(土)13時36分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)
習近平

建党100周年祝賀大会 中山服を着て天安門楼上に立つ習近平中共中央総書記 Carlos Garcia Rawlins-REUTERS

7月1日の建党100周年祝賀大会の構成と習近平の演説は強いシグナルを発していた。参加者が歓声を上げた個所は「人民の心」の表れだ。習近平だけが中山服を着ているのは中国の現役最高指導者のルールに過ぎない。

一、建党100周年祝賀大会の構成から見えるもの

大会冒頭の挨拶は民主党派の一つ「中国国民党革命員会」主席

何よりも驚くべきは、「中国共産党」の建党100周年祝賀大会だというのに、大会の冒頭の演説が習近平・中国共産党中央委員会(中共中央)総書記ではなく、中国国民党革命委員会の万鄂湘主席(全国人民代表大会常務委員会副委員長兼任)だったということだ。

この党は、いま中国にある「八大民主党派&中国工商業連合会&無党派人士」という「非中国共産党の党派」の一つで、1948年に孫中山(孫文)の妻・宋慶齢等を中心に結成された。 万氏は、「非中国共産党の党派」を代表して、中国共産党に祝辞を述べた。

拙著『裏切りと陰謀の中国共産党100年秘史 習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』のp.88~p.90に書いたように、毛沢東は建国当初は「新民主主義体制」により国家運営を始めていたので、「新中国」の「中国人民政府」の指導層には、宋慶齢など多くの民主党派が入っている。

毛沢東が建国した当時の、この「新中国」と同じ形式を演出したわけである。

と同時に、中国には中国共産党以外に、「八大民主党派&中国工商業連合会&無党派人士」の代表が全国政治協商会議や全人代(全国人民代表大会)の代表を構成しているということを世界に示そうとしたものとみなすことができる。

6月25日には『中国新型政党制度』白書が出版され、民主党派等の存在をアピールしたばかりだ。

式典は青少年に重心

天安門広場を埋めた7万人に及ぶ参加者の中に、青少年の示す割合が多く、習近平の演説の前に少年先鋒隊(紅いリボンを締めたピオネール。6歳~14歳)と共青団(中国共産主義青年団。14歳~28歳)の代表たちが「私たちは共産主義の後継者」などという歌を歌い、また4人の代表が舞台の演出のように、中国共産党を讃える言葉を唱えて青少年全員で重ねて唱えるという演出場面があった。

endo20210703094801.jpg
建党100周年祝賀大会で歌う少年先鋒隊たち(CCTVの映像からキャプチャー)

事実、6月30日に新華網が発表した中国共産党員に関する統計によれば、35歳以下の党員は全体の約25%を占め、かつ2020年1月から2021年6月5日の間に新しく入党した党員数は473.9万人で、2020年は242.7万人、2021年6月5日までに231.2万人が入党しているので、2021年で急増していることになる。その中の35歳以下が80.7%を占めるので、「中国共産党の後継者」として若い世代が重要視されていることが分かる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ショルツ独首相、2期目出馬へ ピストリウス国防相が

ワールド

米共和強硬派ゲーツ氏、司法長官の指名辞退 買春疑惑

ビジネス

車載電池のスウェーデン・ノースボルト、米で破産申請

ビジネス

自動車大手、トランプ氏にEV税控除維持と自動運転促
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中