習近平が東京五輪を「熱烈支持」する本当の理由
THE GAMES MUST GO ON
だが今後、アメリカをはじめとする同盟国の強烈な圧力にさらされれば分からない。米国務省のネッド・プライス報道官は4月、北京冬季五輪への参加について、「同盟国と協議したい」として、同盟国や友好国と足並みをそろえる意向を示した。
「なにがなんでも五輪を開催する」ことは、近年対立が目立ってきた日本と中国の国益が珍しく重なる課題だろう。
どちらも表向きの共通の敵は新型コロナのパンデミック(世界的大流行)だ。日本では感染拡大が収まる気配がないし、中国はウイルスの起源だというかねてからの批判や、「武漢の研究所から流出した」という追及をかわそうと必死だ。
とりわけ習にとって、中国のイメージを悪化させる材料がこれ以上出てこないようにすることは重要だ。
なにしろ今年は、中国共産党の創立100周年という記念すべき年。厳密な記念日は7月1日だが、この特別な年が、幅広い領域における華々しい偉業の話題で持ち切りになることを中国指導部が願っているのは間違いない。「東京五輪で中国勢がメダルラッシュ」もその1つだ。
さらに来年秋には、5年に1度の中国共産党大会が開かれる。習は党総書記として3期目の選出が確実視されているが、国内の盛り上がりに支えられた選出でありたいと願うのは当然だろう。
国民のスポーツ熱をバネに
そこで目を付けたのが、近年の中国におけるスポーツ熱の高まりだ。
中国政府はこれまで、五輪で常に顕著な役割を果たしてきたわけではない。2008年の北京夏季五輪も、中国の国際舞台への「デビューイベント」だったという見方が一般的だ。しかし北京五輪は、大衆のスポーツや国際大会への関心を高めるとともに、愛国心を盛り上げる役割を果たした。
東京五輪は、2008年以降にアジアで開かれる初の夏季五輪だ。コロナ禍の前から、中国では過去に例のない大衆の関心と参加が期待されていた。
中国のスポーツ団体が五輪に向けたトレーニングや準備に直接関わったのは初めてだと中国オリンピック委員会(COC)の劉国永(リウ・クオヨン)副会長は語っている。
中国は、東京五輪で「全参加国中トップ3」に入るメダル数を獲得するという野心的な目標まで打ち出した。
中国の場合、この目標は冬季よりも夏季五輪のほうが達成しやすい。中国にとって冬季スポーツは比較的新しい分野で、ロシアやアメリカ、カナダといった伝統的な強豪国にはとても及びそうにないからだ。