最新記事

新型コロナウイルス

コロナ研究所流出説を裏付けるコウモリ動画

Wuhan Lab Video Appearing to Show Bats in Cages Fuels Speculation About Pandemic Origins

2021年6月16日(水)18時44分
サマンサ・ロック
研究員の帽子にぶら下がったコウモリ

武漢研究所はコウモリをケージに入れて飼っていた Sky News Australia -YouTube

<武漢研究所がコウモリを飼育していたことを示す映像が公開された。同研究所と関係の深いWHOのある研究者は、研究所にコウモリなどいない、と否定してきたのだが>

6月13日にインターネットで公開された動画をきっかけに、新型コロナウイルスが武漢ウイルス研究所から流出したという説をめぐる議論がいっそう勢いづいている。同研究所内部で撮影されたという映像には、ケージに入ったコウモリが映っており、すでに100万回以上視聴されている。

この動画を探し出したのは、新型コロナウイルスの起源を調査するアマチュア研究者の集団だ。映像を撮影したのは中国科学院で、2017年5月に武漢研究所で稼働した中国初のバイオセーフティーレベル4実験室(P4実験室)のために制作された映像と言われている。

「新型コロナウイルス感染症に関する分散型の急進的な匿名の調査チーム」の頭文字を取って「DRASTIC(ドラスティック)」と名乗るこの集団は、武漢研究所の文書、画像、実験室データから成る詳細な情報を収集し、まとめた。

「武漢研究所、コウモリ研究、バイオセーフティ」と題された144ページの報告書は、4月に科学者・研究者向けのソーシャル・ネットワーク・サービス、リサーチゲートに掲載された。

現在、話題になっているのは、この報告書に添付された映像の一部。6月13日の夜にスカイニュース・オーストラリアによって「世界初の特ダネ」として放映された。その後、「コウモリが武漢研究所に保管されていたことを映像で証明」という見出しのもと、米動画投稿サイト、ユーチューブにアップロードされた。

(コウモリの映像は7:35ごろ)


暴かれた中国側の嘘

映像のなかには、ケージに入ったコウモリや、コウモリを手に持って生きた虫を与える研究者の姿もある。防護服に身を包んだ研究者の集団が「コウモリを捕獲する」様子を示す画像や、女性の帽子からぶら下がるコウモリの画像も含まれていた。

この映像は、武漢ウイルス学研究所内で撮影された「武漢ウイルス学研究所武漢P4研究所の建設と研究チーム、中国科学院」というタイトルの10分間の動画の一部と考えられている。

スカイニュースは、新型コロナウイルスの発生前に施設内に生きたコウモリがいたことを研究室内の当局者が知っていたことを指摘、そして新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の起源を調査した世界保健機関(WHO)の報告書は「コウモリが武漢ウイルス学研究所で飼われていたことに言及しなかった」と説明した。

「この動画は、私たちが最初からパンデミックの起源について聞かされてきたことの多くが中国による虚偽情報であり、それがその後、武漢ウイルス研究所と協力関係を続けてきて、中立ではない立場の多くの人々によって広められたことを示している」と、スカイニュースの司会者シャリ・マークソンは後にFOXニュースのタッカー・カールソンに語った。

「武漢ウイルス研究所は、生きたコウモリをケージに入れていた。この事実によって、研究所流出説を『陰謀』だとしたWHOのメンバーの主張は否定される」

20210622issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

6月22日号(6月15日発売)は「ルポ 武漢研究所のウソ」特集。新型コロナウイルスの発生源と疑われる中国の研究機関が繰り返した危険な実験。「素人集団」が矛盾を暴く。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

英仏・ウクライナの軍トップ、数日内に会合へ=英報道

ビジネス

米国株式市場=S&P500・ダウ反発、大幅安から切

ビジネス

米利下げ時期「物価動向次第」、関税の影響懸念=リッ

ワールド

再送-日鉄副会長、4月1日に米商務長官と面会=報道
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 9
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中