最新記事

英王室

英国に衝撃!名門オックスフォードの学生がエリザベス女王の肖像を撤去

Queen Elizabeth’s Portrait Removed Over “Colonial History”

2021年6月10日(木)17時37分
ジャック・ロイストン
エリザベス女王

英王室の人種差別疑惑に、女王も無縁ではいられない Hannah Mckay-REUTERS

<大学院生の自治組織が、植民地主義の象徴として肖像写真の取り外しを決定。大学に怒りのメッセージが殺到する騒ぎに>

SNS上では差別的な言動をした人物を排除する「キャンセル・カルチャー」旋風が吹き荒れているが、なんとイギリスの最高学府でエリザベス女王が排除の対象となり、大騒ぎになっている。

きっかけは、オックスフォード大学の数あるカレッジの1つ、マグダレン・カレッジの1室に掲げてあった女王の肖像写真が取り外されたこと。

外したのは、同カレッジの大学院生の自治会だ。英王室の植民地主義的な体質を理由に、院生たちが集う談話室に掲げられていた写真を外すことにしたという。

Queen_Elizabeth_II_1959.jpeg
1959年のエリザベス女王 By Unknown / Library and Archives Canada / Wikimedia Commons

「一部の学生にとって、女王と英王室の肖像は近年の植民地主義的な歴史を象徴するものである」──英紙ガーディアンが引用した自治会の声明はそう説明している。

デイリー・メール紙によると、自治会の今の委員長はメリーランド州出身のアメリカ人院生、マシュー・カッツマンだ。

女王の肖像が外されたことには、多くのイギリス人がショックを受け、騒ぎは政界にまで飛び火した。

ギャビン・ウィリアムソン英教育相は、院生たちの決定にツイッターでこうかみついた。「オックスフォードの学生たちが女王の写真を外すのは、愚かな行為としか言いようがない」

「女王は寛容の精神の象徴なのに」

さらにウィリアムソンは、エリザベス女王は「国家元首であり、わが国の最善の価値の象徴だ」と述べ、「彼女は長きにわたる治世に、寛容の精神、多様性の尊重、他者への敬意というわが国の価値観を、身を粉にして広めてきた」と女王の偉大さをたたえた。

一方、カッツマンはデイリー・メール・オンライン版の取材に応え、「われわれは女王や王室のメンバーに対して何らかの立場を示したわけではない」と語った。ただ、談話室を院生たちが誰でも抵抗なく利用できる「中立的な場」にしたかっただけだ、という。

「談話室はどういう場であるべきか話し合い、文化的・社会的な背景や思想信条に関わらず、誰でも気軽に立ち寄れる中立的な場にしようということになった」

さらにカッツマンはこうも語る。「ロイヤルファミリーの肖像はカレッジ内の多くの場所に飾られているのだから、われわれの談話室に掲げるまでもないと、みんなで決めた。自治会の考えはマグダレン・カレッジの考えではないし、われわれは室内装飾について投票で決めただけで、女王に対して何らかの見解を表明したわけではない。女王や王室には何の立場も取っていない。肖像写真はもっと相応しい場所に掲げるべきだと考えただけだ」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

豪政府が予算案発表、新たな減税盛り込む 財政収支は

ワールド

独IFO指数、3月は86.7に上昇 景気回復期待高

ワールド

米ロ、サウジの会合の結果を分析中=ロシア大統領府

ビジネス

米個人消費が鈍化、物価高や経済見通し悪化で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放すオーナーが過去最高ペースで増加中
  • 3
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えない「よい炭水化物」とは?
  • 4
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 5
    コレステロールが老化を遅らせていた...スーパーエイ…
  • 6
    ロシア軍用工場、HIMARS爆撃で全焼...クラスター弾が…
  • 7
    止まらぬ牛肉高騰、全米で記録的水準に接近中...今後…
  • 8
    【クイズ】アメリカで「ネズミが大量発生している」…
  • 9
    トランプの脅しに屈した「香港大富豪」に中国が激怒.…
  • 10
    ドジャース「破産からの復活」、成功の秘訣は「財力…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 5
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 6
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 7
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 8
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「レアアース」の生産量が多…
  • 10
    古代ギリシャの沈没船から発見された世界最古の「コ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中