最新記事

ウイルス起源

「研究所流出説」を甦らせた素人ネット調査団、新型コロナの始祖ウイルスを「発見」!

Exclusive: How Amateur Sleuths Broke the Wuhan Lab Story

2021年6月4日(金)21時25分
ローワン・ジェイコブソン

アメリカやその他の国々が精力的に調査を進めても、研究所流出説を裏付ける明白な証拠が得られるという保証はない。中国の全面的な協力なしには、徹底した調査はできないが、中国の協力は得られそうにない。

それでも、この雑多な背景を持つ少数のアマチュアたちがやってのけた草の根の調査報道は、21世紀の最大のスクープとなる可能性がある。

以下はその詳しい経緯だ。

DRASTICの1人、「シーカー(探索者)」と名乗る20代後半のインド人男性がメールとテキストメッセージで本誌の取材に応じてくれた。

彼はインド東部の西ベンガル州在住。地元の伝統的な舞踊に使われる仮面をツイッターのロゴにしている。仕事は建築、絵画、映像制作など。母や姉妹がよく作るインドのお粥「キチュリー」のように雑多な素材が混じり合うことで、意外性に富む作品ができるそうだ。

熱心な独学者で、グーグルが監視の目を光らせるネット上の「表通り」からは外れた「路地裏」に精通し、興味を持ったトピックについてはそこでせっせと情報収集をしてきた。その成果をレディットに頻繁に投稿し、75万カルマ・ポイントを獲得したという。

本誌に明かしてくれたプロフィールは以上。本名の公表は控えたいそうだ。

「流出説」を揉み消した大物の正体

パンデミックが始まった当初、新型コロナ関連のニュースを追っていた人たちの例に漏れず、シーカーも武漢の海鮮市場で野生動物からヒトに感染が広がったと信じていた。3月27日付のツイートで、彼は「珍しい動物の取引で生まれたおかしなウイルスで、親や祖父母が死ぬなんて、ひどい話だ」と嘆いた。

彼がそう信じたのは、主要メディアがそう報じたからで、主要メディアがそう報じたのは何人かの科学者がそう主張したからだ。

そう主張した科学者の筆頭格がピーター・ダザック。パンデミックを起こす可能性がある自然界の病原体について大規模な国際調査を行う非営利の研究機関、エコヘルス・アライアンスの代表だ。

ダザックは、武漢ウイルス研究所に所属するコウモリのウイルス研究の第一人者、石正麗(シー・ジェンリー)と長年共同研究を行なってきた。十数本近い論文を共同執筆し、分かっているだけで60万ドルの米政府の助成金を彼女に回してきた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国軍が東シナ海で実弾射撃訓練、空母も参加 台湾に

ビジネス

再送-EQT、日本の不動産部門責任者にKJRM幹部

ビジネス

独プラント・設備受注、2月は前年比+8% 予想外の

ビジネス

イオン、米国産と国産のブレンド米を販売へ 10日ご
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 8
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 9
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 10
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中