最新記事

鳥インフルエンザ

中国で鳥インフル「H10N3株」のヒトへの感染が初めて確認される

2021年6月4日(金)16時30分
松岡由希子
2014年香港、H7鳥インフルエンザが発見

2014年香港、H7鳥インフルエンザが発見され、中国本土からの家禽の輸入が停止された REUTERS/Tyrone Siu

<中国で41歳の男性が鳥インフルエンザウイルス『H10N3株』に感染したと発表された。このウイルスのヒトへの感染が確認されたのは世界で初めてとなる>

中国国家衛生健康委員会(NHC)は2021年6月1日、「江蘇省鎮江市在住の41歳の男性が鳥インフルエンザウイルス『H10N3株』に感染した」と発表した。このウイルスのヒトへの感染が確認されたのは世界で初めてだ。

男性への感染経路などについては明らかになっていない

男性は、4月23日に発熱などの症状があらわれ、4月28日、地域の医療施設に入院。中国疫病預防控制中心(CCDC)が5月28日、男性の検体について全ゲノム解析を実施した結果、「H10N3株」への感染が確認された。

現在、男性の容体は安定しており、近々退院する見込みだという。また、男性の濃厚接触者を対象に健康観察が行われた結果、いずれも異状はみられなかった。なお、男性の感染経路などについては明らかにされてない。

国家衛生健康委員会では、「H10N3株」は低病原性のウイルス株であり、鳥類からヒトへの偶発的な異種間伝播が起こったものの、「H10N3株」の感染が大規模に拡大するリスクは低いと評価している。

また、専門家は、感染予防策として、病気で弱っていたり、死んだ家禽類との接触を避けること、生きている鳥に直接触れないこと、食品衛生に気をつけること、発熱や呼吸器症状があらわれたらマスクを着用することなどを呼びかけている。

新たに混合していないか明らかにする必要がある

国際連合食糧農業機関(FAO)越境性動物疾病緊急センター(ECTAD)のフィリップ・クラース博士によると、「H10N3株」ウイルスは、1970年代後半から2018年までの約40年間に感染した鳥から分離されたが、サンプル数は約160個にとどまる。また、そのほとんどはアジアの野鳥や水鳥から採取されたもので、これまでにニワトリで「H10N3株」が検出されたことはない。

クラース博士は、ロイターの取材で「男性の検体から見つかったウイルスの遺伝子情報を分析し、これまでに採取されたウイルスと似ているのか、他のウイルスと新たに混合したものではないかを明らかにする必要がある」と指摘している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中