インドの「スーパースプレッダーイベント」、虚偽のコロナ検査記録10万件発覚
ランダムな携帯番号で検査をねつ造
こうした突然の検査通知は、検査機関による検査数水増しにより発生したと考えられている。検査を実施したのは州政府に加え、州政府と契約を結んだ24の民間検査機関だ。検査機関がインド医療研究協議会(ICMR)のポータルサイトに実績データを登録し、州政府が検査数を把握する運用となっていた。
ICMRのサイトに個人情報と検査結果が登録されると、システムは検査を受けた本人に対して半自動的にSMS通知を送信する。本人がSMSに記載されたURLを開くと、検査結果を確認できる手はずだ。
ところが、検査数を稼ごうとした検査機関が架空のデータとランダムな携帯番号をシステムに登録したことで、無関係の人々に検査完了通知が送信される事態となった。医療当局は疑念の渦中にある検査記録一覧を現地紙に対して開示したが、そのなかにはほかにも不審な事例が数多く確認されている。検査記録に苗字が入力されていないケースや、同じ苗字があまりにも多く繰り返して現れるケースなどがこれに当たる。
本件はインド国外でも問題として報じられるようになった。英BBCは、虚偽記録の件数は10万件以上に上り、架空の氏名や携帯番号に加えて存在しない住所が使われていたと述べている。英インディペンデント紙も「報道によるとこの大規模な祭典中、10万件以上の偽のコロナ検査が実施された」と述べ、大規模な不正疑惑を伝えている。事態を重く見たウッタラカンド州政府は、警察に対し本件の捜査を命じ、警察は2つの民間検査機関に対して調査を進めている。
さらなる不正が明るみに
タイムズ・オブ・インディア紙は6月20日、本件の続報を発表した。これまでに不正検査が指摘されている2つの検査機関に加え、さらに多くが不正に関与していた可能性に言及するものだ。新たに疑惑の対象となった民間検査機関の一つは、1つの携帯番号を複数の検査記録に流用するという大胆な手口に出ていた。
インド南部のチェンナイに住むランジット・クマール氏は大祭期間中の4月16日、ニューデリーの南西約30キロに位置するグルグラムの街の検査機関から、5通のSMSを受信した。内容は検査結果の陰性を報せるものだが、同一の携帯番号に届いたにもかかわらず、奇妙なことにそれぞれ異なった名前が宛先に記されていたという。クマール氏は検査を受けていないことから、問題のラボが検査件数を稼ぐため、氏の番号を無断利用して実績をねつ造していたものと見られる。
ニューデリー在住のジャーナリストの元にも、検査結果を告げる偽のメッセージが届いている。ジャーナリストはウッタラカンド州知事に苦情を申し立てたが、知事は技術的なエラーが原因だろうと話しており、当初は不正の存在を認めない構えだったという。
クンブメーラに関してはこれまでにも参加者のうち2600名以上から陽性反応が得られ、感染爆発を招いたとして厳しい批判の対象になっていた。今回の不始末はこれに続き、感染者把握のための検査網が正しく機能していなかったことを示すものとなった。