中国の銀行が消費者融資金利引き上げ、不良債権増加懸念で方針転換

4月1日、中国の一部銀行が消費者向け融資の金利を引き上げ始めた。上海の繁華街で2023年3月撮影(2025年 ロイター/Aly Song)
Ziyi Tang Ryan Woo
[北京 1日 ロイター] - 中国の一部銀行が消費者向け融資の金利を引き上げ始めた。先月過去最低水準まで引き下げたばかりだったが、不良債権の増加懸念から方針を転換した。景気浮揚に取り組む政府に逆風となるとみられる。
銀行関係者やウェブサイトの情報によると、中国建設銀行、中国招商銀行、中国銀行、華夏銀行などは、消費者向け融資の金利を少なくとも3%に引き上げた。1日から適用される。
中国政府は米国との貿易摩擦が激化する中、消費者信用を拡大し需要を押し上げようとしており、銀行は先月、貸出金利を過去最低となる2.5%程度に引き下げていた。
中国では消費者信頼感が依然として脆弱であり、金利上昇は借り入れ意欲を抑制する可能性があるとアナリストは警告している。
しかし国営銀行のある融資担当者は、低金利にはマイナス面もあると指摘し、資金繰り難に陥っている借り手が借り入れを増やして返済が滞れば、銀行の資産の健全性が損なわれる恐れがあると述べた。
また、一部の借り手は低金利の消費者向け融資を消費に回さず、高金利の住宅ローンの借り換えに利用しているとの懸念もあるという。
ナティクシスのシニアエコノミスト、ゲイリー・ウン氏は「政府は消費拡大を推進しているが、純金利マージンの急速な縮小と資産の質の悪化など、金融の安定性を懸念しているようだ」と述べた。
<不良債権の増加>
中国の主要国有銀行における総融資額のうち、個人向け消費者ローンの割合は2%程度に過ぎないが、不良債権は増加傾向にある。2024年末時点の個人向け融資の不良債権比率は、中国工商銀行で2.39%、中国農業銀行は1.55%と、いずれも20年以来の高水準となった。
渤海銀行では消費者ローンの不良債権比率が24年末時点で、前年の4.44%から12.37%に急上昇している。
中国交通銀行の幹部は先月の決算会見で、昨年から個人向け融資の返済不能リスクが全体的に高まっており、銀行の資産健全性に対する圧力は今年も続くと予想していると述べた。
INGの中華圏担当チーフエコノミスト、リン・ソン氏は、中国の高い貯蓄率に言及し、家計にお金があるものの支出に慎重になっているとの見方を示した。「より重要な要素は家計の信頼を回復することであり、そのためには健全な賃金上昇と資産価格の安定が第一歩となる」と述べた。